ファクタリングvsレベニューベース融資|将来収益基準の資金調達
ファクタリングとレベニューベース融資は、ともに新興の資金調達手段ですが、評価対象と契約構造が大きく異なります。本記事はSaaS・サブスクリプション事業向けの将来収益基準融資との比較を整理します。
ファクタリングとレベニューベース融資(Revenue-Based Financing、RBF)は、いずれも新興の資金調達手段ですが、評価対象(既発生売掛 vs 将来収益)と契約構造(債権譲渡 vs 収益分配型融資)が根本的に異なります。事業フェーズで使い分けが可能です。
レベニューベース融資は、SaaS・サブスクリプション事業など継続的な収益が見込める事業に対して、将来収益を基準に融資を行う仕組みです。返済額が売上に連動するため、売上変動に応じた柔軟な返済が可能な点が特徴です。海外のプラットフォームが先行した仕組みで、日本でも提供が始まっています。本記事は隣接金融サービス完全比較マトリックスの配下クラスタとして、両者の違いと使い分けを整理します。基礎はファクタリングとはを参照してください。
両者の基本的な違い
評価対象と契約構造が大きく異なります。
4軸での比較
| 論点 | ファクタリング | レベニューベース融資 |
|---|---|---|
| 評価対象 | 既発生の売掛債権 | 将来の継続収益 |
| 法的性質 | 債権譲渡(売買契約) | 収益分配型融資 |
| 返済額 | 譲渡対価の受領 | 売上の一定割合(売上連動) |
| 主な対象 | 事業性売掛のある企業全般 | SaaS・サブスクリプション事業 |
| 主な提供者 | ファクタリング会社 | RBF専門プラットフォーム・VC系 |
| エクイティ希薄化 | なし | 原則なし |
レベニューベース融資の特徴
レベニューベース融資は、SaaS・サブスクリプション事業の継続収益(MRR・ARR)を基準に融資額を決定します。返済額は売上に連動するため、売上が伸びれば返済が早まり、売上が落ちれば返済が遅れる柔軟性があります。エクイティ希薄化を抑えながら成長資金を確保したいスタートアップに好まれます。
レベニューベース融資の対象企業
レベニューベース融資の対象企業には特徴があります。
対象企業の特性
- SaaS・サブスクリプション事業
- 継続的な月次・年次収益(MRR・ARR)
- 顧客のリテンション率が高い
- 収益予測可能性が高い
- VC出資の有無を問わない
提供者を探すときの注意
レベニューベース融資は海外のプラットフォームが先行した仕組みで、日本での提供状況は変化が続いています。事業者名や提供条件は本記事に掲載していません。この分野は参入と撤退が多く、記事に書いた時点の情報がすぐに古くなるためです。
探す場合は、提供元が貸金業の登録を受けているか、契約の形が融資なのか債権の売買なのかを必ず確認してください。名称が同じでも、契約の中身は提供者ごとに違います。
登録の有無は、金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで確認できます。融資として資金を出すのであれば、貸金業の登録が必要です。登録がないまま融資を行う業者は違法です。「レベニューベース」という新しい呼び方であっても、この点は変わりません。
融資条件の特徴
レベニューベース融資の融資額は、企業のMRR・ARR(月次・年次経常収益)の数倍が一般的です。返済額は売上の一定割合(5〜15%など)で、合計返済額が融資額の1.2〜1.5倍程度になる契約条件が代表的です。具体的な条件はプラットフォーム・案件により異なります。
契約の形が違うと何が変わるか
表面的な使い勝手より、契約の形の違いが実務に効きます。ファクタリングは債権の売買、レベニューベース融資は融資です。
3つの違い
| 論点 | ファクタリング(債権の売買) | レベニューベース融資(融資) |
|---|---|---|
| 返す義務 | 原則としてない。売掛先が支払わなくても買戻し義務がないのが基本 | ある。売上が落ちても返済義務は残る |
| 決算書への表れ方 | 売掛金が減り、現金が増える。負債は増えない | 負債が増える |
| 提供者の規制 | 貸金業の登録は不要(債権の売買のため) | 貸金業の登録が必要 |
とくに重要なのが返す義務の有無です。売上が落ちたときに何が起きるかが変わります。ファクタリングでも買戻しの義務が付いた契約であれば、実質は融資に近くなります。契約書でこの点を確認してください。
決算書への影響を比べる
銀行融資を並行して検討している場合、負債が増えるかどうかは審査に影響します。ファクタリングは負債を増やさない一方、手数料の分だけ利益が減ります。レベニューベース融資は負債として計上されます。どちらが有利かは、次に何を調達したいかで変わります。
使い分けの基本
事業形態と評価対象で使い分けます。
ファクタリングが向く場面
- 事業性売掛が継続的に発生
- BtoB取引中心
- 請求書ベースの月次売掛
- 短期の運転資金繰り
- 事業形態を問わない汎用性
レベニューベース融資が向く場面
- SaaS・サブスクリプション事業
- 継続的な月次収益(MRR・ARR)あり
- 中期の成長資金が必要
- エクイティ希薄化を抑えたい
- 売上連動の柔軟な返済を希望
対象企業の重なり
BtoB SaaSなど、両者の対象になりうる企業もあります。一方、BtoC個人向けサービスはファクタリングの対象になりにくく、レベニューベース融資のほうが選択肢として有効な場面があります。
この差は、売掛金が発生するかどうかで生じます。法人顧客に請求書を出して後日入金される形なら、その請求書が買取の対象になります。個人顧客からクレジットカードで毎月自動課金する形では、請求書という形の債権が残りません。同じSaaSでも、顧客の構成によって選べる手段が変わります。
顧客構成が混ざっている場合は、法人向けの売上だけを切り出してファクタリングの対象にできるかを確認してください。請求書を発行している取引があれば、そこから検討できます。
審査で見られるものが違う
準備する資料も、評価の軸も異なります。
| 項目 | ファクタリング | レベニューベース融資 |
|---|---|---|
| 中心になる評価 | 売掛先が支払うかどうか | 自社の収益が続くかどうか |
| 主な提出資料 | 請求書、契約書・発注書、入金履歴、決算書 | MRR・ARRの推移、解約率、顧客数の推移 |
| 自社が赤字の場合 | 売掛先の信用力次第で利用できることがある | 収益の継続性が説明できれば検討対象になる |
| 実績が浅い場合 | 売掛先との取引履歴が短いと条件が厳しくなる | 収益データの蓄積期間が短いと難しい |
ファクタリングは売掛先を見られ、レベニューベース融資は自社を見られます。この違いが、どちらを選べるかを決めます。大手企業への売掛があるなら前者、顧客数は多いが1件あたりが小さいサブスクなら後者が向きます。
選ぶときの手順
- 資金が必要な時期を確認する:数日以内ならファクタリング。数週間の余裕があるなら両方を比べられる。
- 売掛金があるかを確認する:請求書が発行済みの債権があるかどうか。
- 収益の継続性を数字で示せるかを確認する:MRR・解約率のデータが揃っているか。
- 負債を増やしてよいかを確認する:銀行融資を控えているなら、決算書への表れ方が判断材料になる。
- 契約書で返す義務の有無を確認する:買戻し義務が付いていないか。
1と2で決まることが多いはずです。急ぎで、請求書があるならファクタリング。時間に余裕があり、継続収益を説明できるならレベニューベース融資も候補になります。
SaaSでの組み合わせ
BtoB SaaSでは両者を組み合わせて活用するパターンもあります。
組み合わせの例
- 大型法人顧客の請求書はファクタリング
- 個人・小規模顧客のMRRはレベニューベース融資
- 急ぎの資金需要はファクタリング
- 中期成長投資はレベニューベース融資
用途の使い分け
短期・個別案件・BtoB大口取引はファクタリング、中期・継続収益基準・成長資金はレベニューベース融資、というように用途と評価対象で使い分けるのが現実的です。両者を組み合わせることで、SaaSの資金調達戦略が多様化します。
コストの比べ方
2つは費用の出方が違うため、単純に率を並べても比較になりません。
ファクタリングの費用
1回の取引ごとに手数料が発生します。買取差益として、額面と受取額の差で示されます。短期間で資金化するため、率をそのまま年率と比べると高く見えますが、実際の負担は1回分です。ただし、毎月使えばその分だけ積み上がります。
レベニューベース融資の費用
合計返済額が融資額の一定倍(1.2〜1.5倍程度が代表的な水準)になる形が多く、返済期間は売上の伸びによって変わります。売上が早く伸びれば返済期間は短くなり、実質的な負担率は上がります。逆に売上が伸びなければ期間が延び、負担率は下がります。
比べるときの視点
| 確認すること | 見方 |
|---|---|
| いくら手元に残るか | 調達額から費用を引いた実際の手取り |
| いつまで負担が続くか | 1回で終わるのか、返済期間にわたるのか |
| 売上が落ちたらどうなるか | 返済義務が残るか、そこで終わるか |
| 次の調達に影響するか | 負債として計上されるかどうか |
率の数字より、この4点で並べたほうが判断しやすくなります。とくに3番目は、事業が計画どおりに進まなかった場合を想定して確認してください。
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よくある質問
レベニューベース融資は日本でも利用できますか?
利用できます。ただし提供者の入れ替わりが多い分野です。本記事では事業者名を挙げていません。探す場合は、提供元が貸金業の登録を受けているか、契約が融資なのか債権の売買なのかを契約書で確認してください。
SaaSスタートアップにファクタリングは使えますか?
BtoB SaaSで法人顧客への請求書ベースの売掛が発生する場合、対象になります。一方、個人顧客の自動課金中心のSaaSは売掛として発生しにくく、対象になりにくい傾向です。事業形態と顧客構成に応じて選択肢が分かれます。
レベニューベース融資のコストはどのくらいですか?
レベニューベース融資の合計返済額は、融資額の1.2〜1.5倍程度が代表的な水準です。返済期間は売上に連動するため一概に年率換算できませんが、エクイティ調達よりは低コスト、銀行融資よりは高コストという位置づけです。
BtoC事業にレベニューベース融資は使えますか?
BtoCサブスクリプション事業でも、継続収益(MRR・ARR)が見込める場合は対象になり得ます。一方、変動の大きいBtoC事業や、長期サブスクリプションが見込めないeコマースなどは対象になりにくい傾向です。
契約書で必ず確認する点はどこですか
ファクタリングなら、買戻しの義務や償還請求権が定められていないかを見てください。付いていれば、回収できないリスクが自社に残り、実質は借入れに近くなります。レベニューベース融資なら、売上が計画に届かなかった場合の扱い、期限前の一括返済を求められる条件、担保や個人保証の有無を確認してください。
売上が落ちたらどうなりますか
ファクタリングは、すでに譲渡した債権について追加の負担は生じないのが基本です(買戻し義務のない契約の場合)。レベニューベース融資は返済義務が残るため、売上が落ちても返し続けることになります。返済額が売上連動であっても、総額が減るわけではありません。この違いは、事業が計画どおりに進まなかったときに大きく効きます。
両者を併用する場合の注意点は?
両者は対象が異なるため併用は可能ですが、同じ売上を二重評価することは避けてください。BtoB法人取引はファクタリング、BtoC継続収益はレベニューベース融資、というように対象を分けて管理するのが現実的です。
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まとめ
ファクタリングとレベニューベース融資は、評価対象(既発生売掛 vs 将来継続収益)・契約構造(債権譲渡 vs 収益分配型融資)・対象企業(事業性売掛のある企業全般 vs SaaS・サブスクリプション)が根本的に異なる別物の取引です。BtoB SaaSなど両者の対象になりうる企業では、大型法人取引はファクタリング、継続MRR・ARRはレベニューベース融資という組み合わせが現実的です。レベニューベース融資は売上連動の柔軟な返済とエクイティ希薄化回避が特徴で、SaaSスタートアップの資金調達手段として広がりつつあります。具体的な選択と組み合わせは、財務担当者・VC関係者・SaaS支援機関などの専門家にご相談ください。条件で絞り込みたい方はオンライン完結の会社一覧もあわせて活用してください。