電子帳簿保存法対応のファクタリング書類管理|電子取引データの保存要件
オンライン完結のファクタリングで受け取る契約書・請求書・取引明細は、電子帳簿保存法の「電子取引データ」にあたります。3区分と保存要件、令和6年からの猶予措置、消費税(インボイス)保存との違い、書類別の対応を、国税庁の一問一答をもとに第三者の立場で整理しました。
電子帳簿保存法対応のファクタリング書類管理とは、メールやPDF・電子契約でやり取りしたファクタリング契約書・請求書・取引明細などの「電子取引データ」を、電子データのまま所定の要件で保存する実務です。電子データの保存が義務化されたのは2022年1月(令和4年1月)で、「2024年(令和6年)から完全義務化された」と一括りに語られがちですが、実際には2024年1月から要件を満たせない事業者向けの恒久的な「猶予措置」が設けられており、扱いはもう少し複雑です。
オンライン完結・電子契約でのファクタリングが増え、契約書や請求書をPDFやマイページで受け取る場面が一般的になりました。当サイトはファクタリング約209社を第三者の立場で比較し、利用者401人への口コミ調査(2026年3月実施)を運営しています。本記事では、ファクタリングで受け取る書類のどれが電子帳簿保存法の対象か、猶予措置で何が緩むのか、そして電子帳簿保存法と消費税(インボイス)の保存要件がどう違うのかまでを、国税庁の一問一答をもとに整理します。会計・税務まわりの全体像は会計税務×ファクタリング実務深掘りもあわせてご覧ください。
ファクタリング書類の多くは「電子取引データの保存」が対象
結論から言うと、オンライン完結・電子契約のファクタリングで受け取る契約書PDF・請求書・取引明細などは、電子帳簿保存法の3区分のうち「電子取引データの保存」(義務)に当たります。まずは3つの区分と、ファクタリング書類がどこに入るかを押さえましょう。
電子帳簿保存法の3区分
| 区分 | 対象書類 | 義務/任意 | ファクタリングでの該当例 |
|---|---|---|---|
| 電子取引データの保存 | 電子的にやり取りした取引書類 | 義務 | 電子契約の契約書PDF・請求書・取引明細 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った書類を電子化したもの | 任意 | 郵送で届いた契約書・請求書をスキャンする場合 |
| 電子帳簿等保存 | 自社で電子的に作成する帳簿・書類 | 任意 | 会計ソフトの仕訳データ・総勘定元帳など |
電子データの保存が義務化された時期
電子取引データの電子保存は、令和3年度の税制改正で令和4年1月1日(2022年1月)以後に行う電子取引から義務化されました(国税庁一問一答 問13)。メールやマイページで受け取った請求書・契約書を紙に印刷し、元の電子データを破棄する運用は要件を満たしません。電子データそのものを残すことが出発点になります。なお「2024年1月からの完全施行」という表現を見かけますが、この時期に起きたのは、次章で説明する猶予措置への切り替えです。
令和6年1月からの「猶予措置」— 完全義務化ではない
「2024年1月から完全義務化」と説明されることがありますが、正確ではありません。令和4年1月から令和5年12月末まで認められていた「宥恕(ゆうじょ)措置」(やむを得ない事情があり、税務調査で出力書面を提示できれば電子保存の要件を問わない経過的な扱い)が令和5年12月31日で廃止され、令和6年1月1日以後は恒久的な「猶予措置」に切り替わりました。
猶予措置で緩むこと・緩まないこと
猶予措置では、税務署長が「相当の理由」があると認め、かつ税務調査などの際に、①電子データのダウンロードの求め(提示・提出)に応じられ、②整然とした形式・明瞭な状態で出力した書面の提示・提出に応じられる場合には、タイムスタンプなどの改ざん防止措置や検索機能といった保存時の要件を満たしていなくてもよいとされています。事前の申請は不要です(国税庁一問一答 問83・問87)。
ただし、猶予措置でも外してはいけない一線があります。電子データ自体の保存は引き続き必須で、紙に出力した書面「だけ」を保存して電子データを捨てる対応は認められません。「猶予措置=紙保存でよい」ではなく、「電子データは残したうえで、要件の一部が問われないことがある」という理解が正確です。
| 時期 | 名称 | 位置づけ | 電子データ自体の保存 |
|---|---|---|---|
| 令和4年1月〜令和5年12月末 | 宥恕措置 | 経過措置(廃止済み) | 必要 |
| 令和6年1月以後 | 猶予措置 | 恒久措置 | 必要(出力書面のみは不可) |
電子取引データの保存要件(真実性・可視性)
猶予措置に頼らず要件を満たして保存する場合は、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つを満たします。
真実性の確保(次の4つのいずれか)
- タイムスタンプが付されたあとにデータを受け取る
- 受け取り後、速やかにタイムスタンプを付す
- 訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムで授受・保存する
- 正当な理由がない訂正・削除を防ぐ事務処理規程を定めて運用する
このうち事務処理規程の整備・運用は、新たなシステム投資なしで対応しやすい方法です。国税庁が規程のひな形(サンプル)を公表しており、自社向けに手直しして使う事業者が多くあります。
可視性の確保
- ディスプレイ・プリンタなどの見読可能装置と操作説明書の備え付け
- システムの概要書類の備え付け
- 取引年月日・取引金額・取引先で検索できる機能の確保
検索機能が不要になる場合(売上5,000万円以下)
検索機能の確保には緩和があります。基準期間(2年前の事業年度。個人は前々年)の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務調査でダウンロードの求めに応じることを前提に、検索機能を備えなくてよいとされています(国税庁一問一答 問51)。また、出力した書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしている場合も、検索機能は不要です。小規模にファクタリングを使う個人事業主・小規模事業者は、この緩和に当てはまることが少なくありません。
ファクタリング書類はどれが対象か(書類別の棚卸し)
ファクタリング取引で受け取る書類を、保存方法の観点で棚卸しします。オンライン完結の取引では、次の書類の多くが「電子取引データの保存」の対象になります。
書類別の保存対象
| 書類 | 主な受領形式 | 保存の扱い |
|---|---|---|
| ファクタリング契約書 | 電子契約・PDF | 電子取引データの保存(義務) |
| 請求書・手数料明細 | PDF・メール | 電子取引データの保存(義務) |
| 入金・取引明細、取引履歴 | マイページからダウンロード | 電子取引データの保存(義務) |
| 本人確認(eKYC)で提出する本人確認書類 | オンライン提出のデータ | 電子取引データ(取引情報)には当たらない(下記の注記参照) |
| 紙で郵送された契約書・請求書 | 紙 | 原本保存が原則/スキャナ保存(任意)も可 |
なお、本人確認(eKYC)で提出する運転免許証などの本人確認書類は、注文書・契約書・請求書・領収書といった「取引情報」には当たりません。そのため利用者が電子帳簿保存法の電子取引データとして保存する義務の対象ではなく、本人確認に関する記録は、確認を行ったファクタリング会社側で管理されます。
紙で受け取った書類は「スキャナ保存」も選べる
ファクタリング会社から契約書や請求書が紙で届いた場合、その書類は電子取引データではないため、紙の原本を保存するのが原則です。電子化して保管したいときは、任意のスキャナ保存を選べます。スキャナ保存には一定の解像度・タイムスタンプ・検索機能などの要件があるため、業務効率と手間を比べて、紙のまま保管するか電子化するかを判断します。
保存期間は原則7年(10年保存は法人/個人事業主は原則7年)
取引書類の保存期間は原則7年ですが、主体によって扱いが分かれます。法人は、青色申告で欠損金が生じた事業年度の帳簿書類を10年保存する必要があります(欠損金の繰越控除の期間に対応)。一方、個人事業主(所得税)は帳簿書類が原則7年で、法人のような10年保存の定めはなく、純損失の繰越控除も3年です。電子帳簿保存法は、この保存期間中に電子データをどう保存するかの方法を定めるものです。
電子帳簿保存法と消費税・インボイスの保存要件は「別建て」
混同されやすいのが、電子帳簿保存法と消費税(インボイス制度)の保存要件の関係です。電子帳簿保存法の電子データ保存の要件を満たしていない、それだけを理由に消費税の仕入税額控除が否認されるわけではありません。消費税の保存要件は消費税法で別に定められており、電子取引データについても書面に出力して保存する方法が引き続き認められています(国税庁一問一答 問88・問5)。
2つの保存要件の違い
| 観点 | 電子帳簿保存法 | 消費税(インボイス制度) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 帳簿書類の電子的な保存方法の整備 | 仕入税額控除の適用要件 |
| 電子取引データの扱い | 電子データのまま保存が必要(要件あり) | 書面に出力しての保存も可 |
| 要件未達の直接の影響 | 猶予措置あり/総合的に判断 | 消費税法の要件で別途判断 |
加えて、ファクタリング手数料そのものは、一般に消費税の非課税取引(売掛債権など金銭債権の譲渡)として扱われ、手数料に別途消費税が上乗せされないのが通例です。この消費税の課税区分は本記事が扱う電子帳簿保存法とは別の論点のため、詳しくは会計税務×ファクタリング実務深掘りとインボイス制度後のファクタリング仕訳実務で解説しています。いずれにせよ、電子帳簿保存法への対応と、インボイス(消費税)の保存は別々の話として切り分けて考えると混乱を避けられます。法改正の全体像はインボイス・電子帳簿時代のファクタリングもあわせてご覧ください。
要件を満たせないと何が起きるか(誤解しやすいポイント)
「要件を満たさないと即、青色申告が取り消される」「仕入税額控除が否認される」と語られることがありますが、いずれも言い切れるものではありません。よくある誤解と実際を整理します。
よくある誤解と実際
| よくある誤解 | 実際 |
|---|---|
| 要件未達で青色申告が即取消し | その事実のみで直ちに取り消されるわけではなく、個々の事情に応じて総合的に判断されます(帳簿書類の保存が著しく不適切など悪質な場合は、取消しの対象になり得ます) |
| 要件未達で仕入税額控除が否認 | 消費税は別建てで、電子取引データも書面出力による保存が可能です。電子帳簿保存法の要件未達それ自体では否認されません |
| 猶予措置があるから紙保存でよい | 電子データ自体の保存は必須です。出力書面のみの保存(電子データの廃棄)は認められません |
実務で本当に問題になりやすいのは、電子データ自体を保存していないケース(出力書面だけを残してデータを捨てている状態)と、税務調査でデータの提示を求められたときに応じられないケースです。
電子保存のしやすさで見るファクタリング会社選び
電子帳簿保存法への対応のしやすさは、ファクタリング会社の選び方にも関わります。電子交付・取引履歴のダウンロードに対応した会社ほど、保存実務はスムーズになります。
会社選定で確認したい要素
| 確認項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 電子契約への対応 | 電子契約サービスの利用可否、紙契約のみかどうか |
| 書類の電子交付 | 請求書・手数料明細をPDF・データで受け取れるか |
| 取引履歴の確認・出力 | マイページでの取引履歴の閲覧・ダウンロード可否 |
| データの提示のしやすさ | 税務調査で求められた際に整えて出せる形か |
オンライン完結の会社との親和性
当サイト掲載社のうち、対応形式を確認できた201社ではオンライン完結に対応する会社が64社(約3割)ありました(2026年3月時点の集計)。電子契約・電子請求書・eKYCを標準で提供する会社は、受け取る書類が最初から電子データで揃うため、電子取引データの保存に取り組みやすい傾向があります。オンライン完結で選びたい方はオンライン完結の会社一覧から比較できます。
電子帳簿保存法対応で今日やることチェックリスト
ここまでの内容を、明日からの実務に落とし込むためのチェックリストにまとめました。電子帳簿保存法への対応で、まず押さえておきたい項目です。
- 電子で受け取った契約書・請求書・取引明細のデータを捨てず、電子のまま保存する
- 紙で届いた書類は原本を保存し、電子化する場合はスキャナ保存の要件を確認する
- タイムスタンプや専用システムがなければ、国税庁のひな形をもとに事務処理規程を用意する
- 基準期間(2年前・個人は前々年)の売上高が5,000万円以下かを確認する(検索要件の要否)
- 税務調査に備え、電子データを提示・ダウンロードして渡せる状態に整えておく
よくある質問
紙に印刷して保存する従来の方法は使えますか?
電子的に受け取った取引書類は、電子データのまま保存するのが原則です。令和6年1月からの猶予措置でも電子データ自体の保存は必須で、出力書面だけを保存して電子データを捨てる対応は認められません。ただし「相当の理由」が認められる場合は、改ざん防止措置や検索機能などの要件を満たしていなくてよいとされる場面があります。
事務処理規程の整備は必須ですか?
いいえ、必須ではありません。事務処理規程の整備・運用は、真実性を確保する4つの手段のうちの1つです。タイムスタンプや専用システムを使わない場合の現実的な選択肢で、国税庁がひな形を公表しているため、新たな費用をかけずに対応しやすい方法です。
個人事業主・小規模事業者向けの緩和はありますか?
あります。基準期間(2年前の事業年度。個人は前々年)の売上高が5,000万円以下であれば、税務調査でダウンロードの求めに応じることを前提に、検索機能を備えなくてよいとされています。出力書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示できる場合も、検索機能は不要です。
電子帳簿保存法の要件を満たさないと仕入税額控除は否認されますか?
その要件未達だけを理由に否認されるものではありません。消費税の仕入税額控除は消費税法で別に定められており、電子取引データも書面に出力して保存する方法が認められています。電子帳簿保存法とインボイス(消費税)の保存は別の話として切り分けて考えてください。
要件を満たさないと青色申告は取り消されますか?
その事実のみをもって直ちに取り消されるわけではなく、個々の事情に応じて総合的に判断されます。ただし電子データ自体の保存は義務であり、保存を怠った状態が悪質と評価される場合には取消しの対象になり得ます。
ファクタリング会社から紙で契約書が送られてきた場合は?
紙で受け取った書類は、電子取引データではないため紙の原本を保存するのが原則です。電子化したい場合は任意のスキャナ保存を選べますが、解像度やタイムスタンプなどの要件があるため、業務効率と手間で判断してください。
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まとめ
オンライン完結・電子契約のファクタリングで受け取る契約書・請求書・取引明細などは、電子帳簿保存法の「電子取引データの保存」(義務)にあたり、電子データのまま保存するのが原則です。電子保存の義務化は2022年1月からで、2024年(令和6年)1月からは「相当の理由」があれば要件の一部が問われない猶予措置に切り替わりました。ただし電子データ自体の保存は必須で、出力書面のみの保存は認められません。真実性の確保(事務処理規程など)と可視性の確保(検索機能など)が基本要件ですが、売上5,000万円以下なら検索機能は不要になるなどの緩和もあります。電子帳簿保存法と消費税(インボイス)の保存要件は別建てで、電子帳簿保存法の要件未達それ自体で仕入税額控除の否認や青色申告の取消しに直結するわけではない点も押さえておきましょう。電子交付・取引履歴のダウンロードに対応した会社を選ぶと保存実務は進めやすくなります。オンライン完結で比較したい方はオンライン完結の会社一覧を、具体的な対応は顧問税理士・所轄税務署にご相談ください。