ファクタリングは英語で factoring|用語の日英対応表
ファクタリングの英語表記は factoring。当事者は supplier・factor・debtor と呼びます。UNIDROIT国際ファクタリング条約の原文にあたって定義を確かめ、契約の形・お金・書類手続きの日英対応表と、2社間やinvoice discountingなど一対一で置き換えられない語まで整理しました。
英文の契約書や海外の資料でファクタリングに行き当たると、まずスペルを確かめたくなります。ところが factoring・invoice discounting・invoice financing と似た語が並び、どれが日本で言うファクタリングなのか判然としません。
結論から言えば、英語表記は factoring です。ただし国際的な定義には「売掛先への通知」が含まれ、日本で広く使われている形はその定義から外れるのです。
当サイトはファクタリング209社を第三者の立場で比較し、利用者401人への口コミ調査(2026年3月実施)を行っています。読み終えると、英文契約書のどの語を先に確認すべきか、海外の相手に自社の資金調達をどう説明すればよいかが分かります。
ファクタリングの英語表記と関係者の呼び方
ファクタリングは英語の factoring をそのままカタカナにした言葉です。つづりは f-a-c-t-o-r-i-n-g で、日本語の意味と大きくずれてはいません。
ただし当事者の呼び方は日本語と違います。英文の資料を読むときに最初につまずくのはここなので、先に整理しておきます。
つづりと、動詞で使うときの形
名詞は factoring、動詞は factor です。動詞は「債権を売って資金化する」という意味で使われ、たとえば to factor an invoice で「請求書を資金化する」となります。
過去分詞の factored を使った factored receivables は「売却済みの売掛債権」を指します。英文の会計資料でよく見かける形です。
間違えやすいのが factoring service という言い方でしょう。誤りではありませんが、英語圏の資料では factoring の一語で金融サービスを指すのが普通です。
語源は「代理人」を意味する factor
factor はラテン語の「行う人」に由来し、英語では古くから「代理人」「仲買人」を意味してきました。数学で使う「因数」も同じ語ですが、金融の文脈ではつながりません。
この語源を知っておくと、なぜファクタリング会社が英語で factor と呼ばれるのかが腑に落ちます。売り手に代わって代金を回収する立場だからです。
日本では「ファクター」という呼び方はほとんど使われず、「ファクタリング会社」「買取会社」と呼ぶのが一般的です。英文契約書で the Factor と大文字で書かれていたら、それは相手方のファクタリング会社を指します。
取引に登場する3者の呼び方
取引には3者が登場し、それぞれに決まった呼び方があります。
| 英語 | 日本語での立場 | 読み替えのポイント |
|---|---|---|
| supplier | 利用者(債権を売る側) | 「供給者」の意味。client と書かれることもある |
| factor | ファクタリング会社 | 契約書では the Factor と大文字で定義される |
| debtor | 売掛先(代金を支払う側) | account debtor とも書く。日本語の「債務者」にあたる |
注意したいのは debtor です。日本語で「債務者」と聞くと借金をしている人を思い浮かべますが、ここでは単に「代金を払う立場の取引先」を指します。信用が悪いという意味は含まれません。
日本語の用語そのものの定義はファクタリング業界用語辞典50にまとめています。
国際条約が定める factoring の定義
factoring には、国際的な条約に書かれた定義があります。UNIDROIT(私法統一国際協会)が1988年にまとめた国際ファクタリング条約です。
この定義を押さえておくと、英語の資料が何を factoring と呼んでいるのかが正確に読み取れます。そして日本で当たり前になっている形が、この定義から外れていることにも気づけるはずです。
対象になるのは物品の売買契約から生じる債権で、主として個人・家庭用に購入された物品の分は除かれます。第1条3項は、役務の提供も物品に含めて読むと定めた規定です。
4つの機能のうち2つ以上を担うことが条件
条約の第1条2項は、factoring contract を「supplier と factor のあいだで結ばれる契約」と定義したうえで、factor が次の4つの機能のうち少なくとも2つを担うことを求めています。
| 条文の英語 | 意味 |
|---|---|
| finance for the supplier, including loans and advance payments | 利用者への資金供与(貸付や前払いを含む) |
| maintenance of accounts (ledgering) relating to the receivables | 売掛債権に関する元帳の管理 |
| collection of receivables | 売掛債権の回収 |
| protection against default in payment by debtors | 売掛先の支払不履行からの保護 |
日本のファクタリングが強く寄っているのは、このうち1つ目の資金供与です。元帳の管理や回収の代行までまとめて引き受ける形は多くありません。
英語の資料で factoring と書かれていたら、資金化だけでなく債権管理まで含んだサービスを指している可能性がある——そう読み替えると誤解が減ります。
定義には売掛先への通知が含まれる
もうひとつ見落とせないのが、条約の定義に次の一文が入っていることです。
notice of the assignment of the receivables is to be given to debtors(債権譲渡の通知が売掛先に対して行われること)
つまり条約が想定する factoring は、売掛先に「この債権は譲渡されました」と知らせる形を前提にしています。日本でいう3社間にあたる形です。
ところが当サイトが掲載する209社を対応方式で見ると、売掛先に知らせない2社間に対応する会社が138社、3社間に対応する会社が138社と並んでいます。母数は対応方式(2社間・3社間・オンライン完結)のいずれかを公表している201社で、1社が複数の方式に対応するため合計は一致しません。つまり方式を公表している会社の約7割が2社間に対応しており、売掛先に知らせない形は例外ではなく標準の選択肢になっています。
この違いは、海外の取引先や金融機関に自社の資金調達を説明するときに効いてきます。単に「factoring を使っている」と言うと、相手は売掛先も承知の取引だと受け取りかねません。
日本はこの条約の締約国ではない
ここまで条約を軸に説明してきましたが、前提として押さえておきたいことがあります。日本はこの条約の締約国ではありません。
条約は1995年5月1日に発効し、2026年7月時点の締約国はベルギー・フランス・ドイツ・ハンガリー・イタリア・ラトビア・ナイジェリア・ロシア・ウクライナの9か国です。日本国内のファクタリング契約に、この条約が直接適用されることはありません。
それでも参照する価値はあります。用語の定義を確かめる出発点として広く参照されており、意味を照らし合わせる物差しになるからです。国境をまたぐ取引そのものの実務は国際ファクタリングとはで扱っています。
日本語の用語と英語の対応表
実務で必要になるのは、日本語の用語を英語で何と言うかの一覧です。契約の形・お金・書類手続きの3つに分けてまとめました。
英文契約書や海外の資料を読むときは、この表を横に置いて引いてみてください。
契約の形に関する語
| 日本語 | 英語 | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| ファクタリング | factoring | service は付けずに単独で使う |
| 3社間ファクタリング | notification factoring | 通知のみが要件。日本の3社間は承諾と三者契約を伴うため条件が重い |
| 2社間ファクタリング | non-notification factoring | 完全には一致しない。次章で扱う |
| 償還請求権あり | with recourse / recourse factoring | 未回収時に利用者が負担を負う形 |
| 償還請求権なし | without recourse / non-recourse | 日本の買取型は原則こちら |
| 買取型 | receivables purchase | 債権を売り切る形 |
| 保証型 | credit protection | 単独商品なら trade credit insurance が近い |
| 債権譲渡 | assignment of receivables | 民法466条が定める譲渡にあたる |
償還請求権の中身は償還請求権とはで詳しく整理しました。英語では recourse の一語で表され、契約書では通常この語を含む条項名で探せます。
お金に関する語
| 日本語 | 英語 | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| 売掛債権 | accounts receivable / trade receivables | AR と略される |
| 債権額(額面) | face value / invoice amount | 手数料を引く前の金額 |
| 買取代金 | purchase price | 実際に受け取る金額 |
| 手数料 | factoring fee / discount fee | discount fee は値引きではなく手数料そのもの |
| 掛目・前払い率 | advance rate | 日本は買取代金を2回に分けないため、この項目自体が出てこないことが多い |
| 留保金 | reserve | 同上。回収後に精算される |
| 支払期日 | due date / maturity date | maturity は満期の意味 |
discount fee と discount rate は、どちらも手数料を指します。invoice discounting の discounting も手形割引と同じ「額面から割り引く」という意味で、「請求書の値引き」ではありません。
書類と手続きに関する語
| 日本語 | 英語 | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| 請求書 | invoice | 最も基本になる書類 |
| 譲渡通知 | notice of assignment | 条約は書面での通知の要件を定めている |
| 売掛先の承諾 | acknowledgement / consent | 通知と承諾は別の手続き |
| 基本契約 | master agreement | 個別の取引はその下で行う |
| 審査 | credit assessment / due diligence | 売掛先の信用を調べる工程 |
| 債権譲渡登記 | (定訳なし) | 日本固有の制度。説明を添えて訳す |
債権譲渡登記を英文で書くときは、registration of the assignment at the Legal Affairs Bureau のように制度の中身を説明する形にするのが実務的です。
一対一で対応しない3つの語
対応表で足りるものばかりではありません。日本語と英語で指しているものがずれる語が3つあり、ここを取り違えると相手との認識が食い違います。
順に見ていきます。
2社間ファクタリングにあたる英語はない
前章の表では2社間に non-notification factoring を当てましたが、これは近いというだけで同じものではありません。
共通しているのは、売掛先に知らせず利用者が回収を続ける点です。違うのは契約の組み立て方で、日本の2社間は債権の売買として設計されるのに対し、英語圏で同じ実態を指す取引は貸付として組まれることもあります。
だから英文の資料で「2社間ファクタリングを利用している」と伝えたいときは、non-notification factoring と一語で置くよりも、債権を売り切る形であることと回収は自社が続けることの2点を分けて説明したほうが誤解されません。2社間と3社間の仕組みそのものは2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いで扱っています。
invoice discounting との違い
英国を中心によく使われる invoice discounting も、factoring とは区別される語です。分かれ目は回収を誰が担うかにあります。
| factoring | invoice discounting | |
|---|---|---|
| 回収の担い手 | ファクタリング会社 | 利用者が続ける |
| 売掛先への通知 | 行うのが前提 | 行わないことが多い |
| 日本で近い形 | 3社間 | 2社間 |
英語圏の資料が両者を並べているときは、この違いを論じていると考えて読み進めてください。「どちらが優れているか」という話ではなく、回収業務を外に出すかどうかの選択です。
買取代金の支払われ方が違う
3つ目は、お金の受け取り方そのものです。ここは表にすると違いがはっきりします。
| 日本で一般的な形 | 英語圏で一般的な形 | |
|---|---|---|
| 支払いの回数 | 1回 | 2回 |
| 1回目 | 債権額から手数料を引いた金額 | advance(債権額の一部) |
| 2回目 | なし | 売掛先の入金後、reserve から手数料を引いて精算 |
英語圏の形は、現地のファクタリング事業者が公開している一般的な条件にもとづく整理です。
英文の見積書に advance rate という項目が出てきたら、それは手数料率ではありません。債権額のうち先に受け取れる割合を指します。手数料は factoring fee や discount fee という別の項目です。
この2つを取り違えると、コストの見積もりが大きく狂います。英文の条件表を読むときは、advance rate と fee を分けて確認してください。
国内で契約する場合は、対応方式から候補を絞るのが早道です。対応方式の条件で掲載209社を絞り込むところから比べてみてください。
よくある質問
ここからは、英語表記について寄せられることの多い疑問への回答です。
ファクタリングのスペルを教えてください
factoring と書きます。f-a-c-t-o-r-i-n-g の9文字で、動詞は factor、過去分詞を使った factored receivables は「売却済みの売掛債権」を指します。
ファクタリング会社は英語で factor です。契約書では the Factor と大文字で定義され、以降その語が相手方を指します。
invoice financing との違いは
invoice financing は請求書を使った資金調達の総称で、factoring はその中の一形態です。invoice discounting も同じ総称の下に入ります。
英語圏の資料で invoice financing と書かれていたら、まず「売り切る形なのか、借りる形なのか」を確かめてください。総称のままでは、債権を売買しているのか担保に入れているのかが判別できません。
英文契約書でまず確認すべき語はどれですか
recourse です。with recourse と書かれていれば売掛先が支払わなかったときの負担が利用者に戻り、without recourse なら原則として戻りません。
次に見るのが notice of assignment の扱いです。通知を出す前提かどうかで、売掛先との関係も手続きも変わります。この2つを押さえてから、fee と advance rate の条件に進むと読み違えが減ります。
給与ファクタリングは英語で何と言いますか
対応する英語はありません。給与ファクタリングは日本で生まれた呼び方で、条約が定義する factoring とは別のものです。
この取引について最高裁は令和5年2月20日の決定で、経済的に貸付けと同様の機能を持つとして貸金業に該当する旨の判断を是認しています。無理に英語に置き換えるより、salary advance schemes treated as money lending in Japan のように、日本での法的な扱いを添えて説明するのが正確です。詳しくは給与ファクタリングは違法で整理しています。
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- 2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違い
- 売掛債権とは
- 給与ファクタリングは違法
まとめ
ファクタリングの英語表記は factoring、当事者は supplier・factor・debtor と呼びます。ここまでは対応表で足りるはずです。
注意が要るのは、国際条約が定める factoring の定義に売掛先への通知が含まれている点です。日本では通知しない形が広く使われているため、「factoring を使っている」とだけ伝えると相手の理解とずれます。
英文契約書を読むなら、まず recourse の有無、次に通知の扱い、そのうえで fee と advance rate を分けて確認してください。最適な選択は資金繰りの状況・売掛先・金額によって変わります。国内で契約先を探すなら、条件を指定して掲載209社から候補を絞り込むところから始めてみてください。