将来債権ファクタリングとは|注文書で資金化する条件と注意点
まだ請求書を出せない売上も、民法466条の6により譲渡自体は認められています。扱う会社が少ないのは法律の制限ではなくリスクの取り方の違い。掲載209社の対応業種データから「制約は業種ではなく債権の確定度にある」ことを示し、申し込む前に確かめる4点をまとめました。
受注は決まっているのに、着工前の材料費と人件費が先に出ていく。入金は納品してから2か月後——このズレをどう埋めるかは、受注が大きいほど切実になります。まだ請求書を出せない段階の売上を資金化できないか、と考えるのは自然なことです。
結論から言えば、将来債権の譲渡は法律で認められています。民法にそう書かれています。ただし買い取りに応じる会社は確定債権より少なく、条件も同じではありません。
当サイトはファクタリング209社を第三者の立場で比較し、利用者401人への口コミ調査(2026年3月実施)を行っています。読み終えると、将来債権が使える場面と避けたほうがよい場面、契約前に何を確かめるべきかが判断できます。
将来債権とは|請求書が出る前の売掛金
将来債権とは、まだ発生していない売掛金のことです。受注は決まっているけれど納品前、あるいは継続契約で来月以降に発生する分がこれにあたります。
「請求書がまだ出せない段階でも資金化できるのか」——この問いに先に答えると、法律上は譲渡が可能です。ただし引き受ける会社は限られます。この2つを分けて理解しておくことが出発点です。
| 確定債権 | 将来債権 | |
|---|---|---|
| 状態 | 商品やサービスの提供が済んでいる | 提供がこれから |
| 根拠になる書類 | 請求書 | 注文書・契約書 |
| 譲渡の可否 | できる | できる(民法466条の6) |
| 扱う会社の数 | 多い | 限られる |
確定債権との違いは請求書の有無
両者を分けるのは、約束した仕事を終えているかどうかです。工事が完了して請求書を出した段階の売掛金は確定債権、契約は交わしたが着工前という段階のものは将来債権になります。
この違いが効いてくるのは、債権が「本当に発生するか」という点です。確定債権は仕事が済んでいるので、あとは売掛先が払うかどうかだけを見れば足ります。将来債権は、そもそも納品にたどり着けるかという不確かさが加わります。
売掛債権として認められる要件そのものは売掛債権とはで整理しました。ここでは「確定しているかどうか」の一点だけを押さえておいてください。
民法は将来債権の譲渡を認めている
将来債権を譲渡できることは、条文にはっきり書かれています。民法第466条の6第1項です。
「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。」
続く2項は「譲受人は、発生した債権を当然に取得する」と定めており、後から発生した債権は自動的に譲受人のものになります。2020年4月に施行された改正民法で新設された規定です。改正がファクタリング実務全体に与えた変化は2020年民法改正がファクタリング実務に与えた影響で整理しました。
譲渡した事実を相手に主張するには、対抗要件という条件を別に満たす必要があります。対抗要件とは、譲渡があったことを相手方に主張するための法律上の要件のことです。
売掛先に主張するには、譲渡人からの通知か売掛先の承諾が要ります。売掛先以外の第三者にも主張するには、その通知や承諾が確定日付のある証書、たとえば内容証明郵便でなければなりません。
法人が譲渡する場合は、法務局に譲渡を登録する債権譲渡登記でも第三者に主張できます。ただしこの場合、売掛先に主張するには登記事項証明書を添えた通知か承諾が別に必要です。
この考え方は将来債権でも変わりません。対抗要件そのものの詳細は民法467条と債権譲渡で扱っています。
「譲渡できない」と「扱う会社が少ない」は別の話
ここは混同されやすい論点です。「ファクタリングは確定債権しか扱えない」という言い方は、実務の傾向としては当たっていても、法律の説明としては正確ではありません。
正確には、譲渡そのものは適法にできます。けれども買い取りに応じる会社が少ないということです。理由は法律ではなく、リスクの取り方にあります。
この区別は実務でも意味を持ちます。「法律で禁じられている」と思い込んでいると探すこと自体をやめてしまいますが、実際には引き受ける会社が存在するからです。次章でその形を見ていきます。
実務では注文書ファクタリングとして扱われる
将来債権ファクタリングは、実務では「注文書ファクタリング」という名前で扱われることがほとんどです。名前のとおり、請求書ではなく注文書を根拠にします。
この記事では法律上の扱いと供給側のデータを中心に整理します。資金化までの流れ、審査で見られる点、建設業での具体的な使い方は注文書ファクタリングとはで詳しく扱っているので、実務の手順を知りたい方はそちらをあわせて読んでください。
どんな形で、どこに当たれば見つかるのか。掲載209社の登録情報も使いながら整理します。
注文書や契約書を根拠に資金化する
提出するのは、受注が成立していることを示す書類です。注文書、注文請書、業務委託契約書などが該当します。
資金化のタイミングは、着工前や制作着手前です。人件費や材料費の支払いが先に来て、入金は納品後という工程のズレを埋める使い方になります。大口の受注を受けたときの資金繰りの組み立ては大口受注時のファクタリング活用で扱いました。
ファクタリングの分類全体のなかでの位置づけはファクタリングの種類8つにまとめてあります。在庫や設備まで担保にできるABLとの違いもあわせて確認しておくと、選択肢の広さが見えてくるでしょう。
業種の間口は広く、制約は債権の確定度にある
「注文書ファクタリングは建設業のもの」という印象を持たれがちです。実際に利用者の構成では建設業が中心とされますが、掲載209社を対応業種で見ると事情が違ってきます。
| 対応業種の数 | 会社数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 5業種すべて | 194社 | 建設・製造・運送・小売・サービス |
| 1業種のみ | 15社 | サービス業8社・建設業5社・運送業2社 |
209社のうち194社は5業種すべてを受け付けており、業種で門前払いされる構図にはなっていません。業種を絞っているのは15社だけです。
つまり将来債権が扱われにくい理由は、業種ではありません。債権が確定していないという一点にあります。同じ建設業の案件でも、完工後の請求書なら多くの会社が受け付け、着工前の注文書なら候補が絞られるということです。
なお業種を絞っている15社は、金額帯が高額9社・中額6社で少額帯はゼロ、手数料帯は低手数料が9社、入金は翌日以降が11社という構成でした。これは各社が公表する条件を集計した事実で、将来債権を扱うかどうかとは別の話です。対応業種と金額帯の条件で掲載209社を絞り込むところから探してみてください。
審査で見るのは納品できるかどうか
確定債権の審査は、売掛先が期日に払えるかを中心に見ます。将来債権では、そこにもう1つの問いが加わります。そもそも納品まで到達できるのかという点です。
そのため確認される材料が増えます。過去に同種の案件を完了させた実績、人員や外注先の手配状況、工程表の妥当性といったところです。
確認する材料が増える分、確定債権より手続きが長引くことがあります。即日の資金化を当て込まず、工程に余裕を持って相談するのが現実的です。
将来債権ならではの3つのリスク
確定債権にはない不確かさがある以上、負うリスクも変わります。申し込む前に3つを押さえておいてください。
| リスク | 何が起きるか | 備え方 |
|---|---|---|
| 債権が発生しない | 納品できなければ買い取りの前提が崩れる | 工程に余裕のある案件から使う |
| 特定が足りない | どの債権を譲渡したのか争いになる | 期間と上限額を契約書で確定させる |
| 譲渡範囲が広すぎる | その後の資金調達の余地が狭まる | 必要な分だけに範囲を絞る |
納品できなければ債権は発生しない
最も大きいのはこれです。工期の遅れ、仕様変更、受注のキャンセル——どれが起きても、予定していた売掛金は生まれません。
買い取りの前提が崩れたとき、どう精算するかは契約書の定め方によります。買戻しや代金の返還を求める条項が置かれていれば、受け取った資金を返す立場になります。
ここで注意したいのは、この場面が「売掛先が支払えなかったときの負担」とは別の論点だという点です。後者は償還請求権(買い手が売り手に代金の返還を求める権利)の話で、日本の事業者向けファクタリングでは付けないのが原則です。考え方の違いは償還請求権とはで整理しました。
また金融庁は、買戻しの条件が付くなど経済的に貸付けと同様の機能を持つ取引について、貸金業に該当するおそれがあると注意を促しています。条項があること自体を当然と受け止めず、中身を確かめてください。
だからこそ、確実性の低い案件で使うのは避けたほうがよいでしょう。着手の目処が立っていて、遅れても工程で吸収できる案件から試すのが現実的です。
期間と金額を特定しておく必要がある
将来債権の譲渡では、どの債権を譲ったのかを後から特定できることが欠かせません。まだ存在しないものを譲る以上、範囲があいまいだと争いのもとになるためです。
実務では、発生原因(どの取引先とのどの契約か)、期間の始まりと終わり、金額の上限を契約書で定めます。継続契約の将来分をまとめて譲渡する場合はとくに重要です。
契約書を受け取ったら、この3点が書き込まれているかを確かめてください。書かれていなければ、その場で補ってもらうのが安全です。
譲渡の範囲を広げすぎると資金繰りを縛る
見落とされやすいのが3つ目です。将来の売上を広い範囲で譲り渡してしまうと、その後に別の資金調達をしようとしたとき、担保にできる債権が手元に残っていない状態になります。
金融機関から見ても、将来の入金があらかじめ他社に渡っている会社は評価しにくくなります。目先の資金を得る代わりに、次の一手を狭めることになりかねません。
譲渡する範囲は、今回必要な金額と期間に絞ってください。この原則を守るだけで、多くの問題は避けられます。
申し込む前に確かめる4点
ここまでを、申し込み前に自分で点検できる形にまとめます。4つとも「はい」と答えられてから相談に進んでください。
納品までの工程に無理がないか
最初に確かめるのは案件そのものです。着手の目処が立っているか、必要な人員と材料を確保できているか、工期が遅れても吸収できる余裕があるか。
ここに不安があるなら、将来債権での資金化は見送るほうが安全です。納品できなければ買戻しの話になり、資金繰りはかえって苦しくなります。
譲渡する期間と上限額を決めたか
次に、譲る範囲を自分の側で先に決めておきます。今回いくら必要で、どの契約のどの期間分を充てるのか。
相手に言われるまま広い範囲を譲ると、次の調達余地を失います。必要額を計算してから交渉に入ると、範囲を絞る根拠を持って話せます。
確定債権と条件を比べたか
手元に確定した請求書があるなら、そちらと条件を比べてみてください。将来債権は不確かさが上乗せされる分、条件が有利になりにくい取引です。
比べる軸は手数料だけではありません。入金までの日数、必要書類の量、審査にかかる時間も含めて、確定債権を先に使うほうが早く安く済まないかを確かめます。
買戻しの条項を読んだか
最後は契約書です。債権が発生しなかったときにどうなるかは、買戻しや償還請求に関する条項に書かれています。
この論点は将来債権ではとくに現実味があります。確定債権なら例外的な場面でも、将来債権では起こりうる話だからです。条項の読み方は償還請求権とはで整理しました。
| 確認項目 | 見るところ | 不安が残るときの代替行動 |
|---|---|---|
| 工程に無理がないか | 着手の目処・人員と材料・工期の余裕 | 請求書が出るまで待つ |
| 期間と上限額を決めたか | 必要額の計算・対象契約・期間の始期と終期 | まず1件だけで試す |
| 確定債権と比べたか | 手数料・入金日数・必要書類・審査期間 | 確定債権を先に使う |
| 買戻しの条項を読んだか | 債権が発生しなかった場合の精算方法 | 条項を書面で説明してもらう |
よくある質問
ここからは、将来債権について寄せられることの多い疑問への回答です。
注文書だけで資金化できますか
注文書だけで完結することは多くありません。契約書や工程表、過去の取引実績をあわせて求められるのが一般的です。
ただし注文書を根拠に資金化する取引そのものは実在します。引き受ける会社が確定債権の場合より少ないだけなので、相談する前に受注の成立を示す資料をまとめておいてください。
将来債権の譲渡は違法ではないのですか
適法です。民法第466条の6第1項が「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」と定めており、2020年4月施行の改正民法で明文化されました。
「ファクタリングは確定債権しか扱えない」という言い方は、実務の傾向であって法律上の制限ではありません。両者を分けて理解しておくと、選択肢を自分から狭めずに済みます。
確定債権より手数料は高くなりますか
高くなりやすい取引です。納品まで到達できるかという不確かさが上乗せされるため、その分が条件に反映されます。
ただし具体的な水準は会社と案件によって変わります。手元に確定した請求書があるなら、そちらの条件と並べて比べたうえで判断してください。
注文書ファクタリングとは同じものですか
ほぼ同じ取引を指します。将来債権ファクタリングが法律上の呼び方、注文書ファクタリングが実務での呼び方だと考えると整理しやすいでしょう。
厳密には、将来債権には注文書がまだ出ていない継続契約の将来分も含まれます。その場合も、期間と上限額を契約書で特定しておく必要がある点は変わりません。
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まとめ
将来債権ファクタリングは、民法が譲渡を認めている取引です。「扱えない」のではなく「引き受ける会社が少ない」というのが実態で、この2つを分けて理解しておくと選択肢を自分で狭めずに済みます。
制約は業種ではありません。掲載209社のうち194社が5業種すべてに対応しており、分かれ目は債権が確定しているかどうかにあります。
使うなら、納品まで到達できる案件に絞り、譲渡する期間と上限額を先に決めてから相談してください。最適な選択は資金繰りの状況・売掛先・金額によって変わります。手元に確定した請求書があるなら、条件を指定して掲載209社から候補を絞り込むほうが早い場合もあります。