個人情報保護法改正とファクタリング情報管理|本人確認データの取扱
個人情報保護法の改正で、ファクタリングでの個人情報の取扱が厳格化されています。本記事は会社の情報管理体制、本人確認データの取扱、売掛先情報を渡す際の第三者提供の考え方、漏えい時の対応を中立的に整理します。
資金繰りを急ぐ場面では、本人確認書類や決算書、さらに売掛先の情報まで渡すことになり、「この情報はどう扱われるのか」「売掛先に無断で渡して問題ないのか」と不安を感じる方は少なくありません。
当サイトはファクタリング約209社を第三者の立場で比較し、利用者401人への口コミ調査(2026年3月実施・N=401)を運営する立場から、個人情報保護委員会(PPC)の公開資料と独自調査にもとづいて情報管理の論点を整理します。
先に結論をお伝えすると、売掛先の情報をファクタリング会社に渡す行為は、債権譲渡に付随する個人データの提供として本人(売掛先)の同意が事実上推定され、多くの場合は個別に明示の同意を得なくても差し支えないと整理されています。以下で、その根拠と会社選びの確認ポイントを解説します。
個人情報保護法改正とファクタリング情報管理とは、改正個人情報保護法(2022年4月全面施行)に基づくファクタリング業界での情報管理体制と、利用者の本人確認データの取扱を整理する考え方です。漏えい時の対応も論点になります。
ファクタリングでは、本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード)、取引データ、契約書、入金口座情報に加え、売掛先(取引先)の情報まで多様な個人情報をやり取りします。改正個人情報保護法では、漏えい時の報告義務、本人通知、データ管理体制の強化などが求められています。本記事はインボイス・電子帳簿時代のファクタリングの配下クラスタとして、利用者が売掛先情報を渡す行為の第三者提供上の扱い、会社の情報管理体制、漏えい時の対応、契約前の確認ポイントを整理します。基礎はファクタリングとはを参照してください。
ファクタリングで取扱う個人情報
ファクタリング取引では多様な個人情報を取扱います。
主な個人情報の種類
| 情報の種類 | 具体例 | 取扱の特性 |
|---|---|---|
| 本人確認情報 | 運転免許証・マイナンバーカード | 保管期間は各社規程・適用法令により異なる |
| 取引情報 | 契約書・請求書・取引履歴 | 長期保管が必要、税務関連 |
| 金融情報 | 入金口座・取引銀行 | 金融取引情報、慎重な取扱 |
| 取引先情報 | 売掛先の会社情報・連絡先 | 第三者情報の取扱 |
| 経営情報 | 確定申告書・決算書 | 経営機密情報 |
マイナンバーの取扱に関する注意
マイナンバー(個人番号)は、番号法(マイナンバー法)によって利用できる場面が法律で限定された情報です。ファクタリングの本人確認は、通常は運転免許証などの顔写真付き身分証(券面)で足り、税や社会保障の手続き(番号関係事務)を伴わないファクタリング会社が個人番号そのものの提出・記録を求める場面は一般に想定しにくいといえます。マイナンバーカードを本人確認書類として使う場合でも、多くは券面(氏名・住所・顔写真)での確認で足ります。もし個人番号の提出を求められたら、その利用目的と保管方法を提出前に確認しましょう。
売掛先の情報を渡すのは個人情報保護法上どうなるか
ファクタリングでは、利用者が売掛先(取引先)の情報をファクタリング会社に渡します。「売掛先に無断で個人情報を第三者提供してよいのか」と不安に感じる方もいます。検索上位でも整理された解説が少ない論点のため、個人情報保護委員会(PPC)の公開資料をもとに一般的な考え方を整理します。
そもそも売掛先の情報は「個人情報」に当たるか
個人情報保護法が守る「個人情報」は、生存する個人に関する情報です(個人情報の保護に関する法律 第2条第1項・e-Gov法令検索)。そのため、売掛先が法人の場合、会社そのものの情報(会社名・所在地・法人としての取引条件など)は個人情報には当たりません。一方で、同じ売掛先でも次のケースは個人情報として扱われます。
| 売掛先のケース | 個人情報保護法上の扱い |
|---|---|
| 法人そのものの情報(会社名・所在地) | 個人情報には当たらない |
| 法人の代表者・担当者など自然人の情報 | 個人情報に当たる(法2条1項) |
| 売掛先が個人事業主で、その事業主本人の情報 | 個人情報に当たる(法2条1項) |
つまり、売掛先が個人事業主のときや、法人でも担当者個人の氏名・連絡先を渡すときは、個人情報のやり取りが生じていると考えておくのが安全です。なお、利用者自身が個人事業主の場合、利用者本人の情報も個人情報として保護の対象になります。
渡すのに売掛先の同意は必要か
気になるのは「売掛先本人の同意なしに情報を渡してよいのか」という点です。個人情報保護委員会が公開する質疑応答(FAQ Q5-4)では、債権譲渡に付随して、譲渡人(利用者)から譲受人(ファクタリング会社)へ債務者などの個人データを提供する場合、法27条が求める本人(売掛先)の同意は事実上推定でき、個別に明示の同意を得なくても差し支えないと整理されています。仮に本人が提供を明示的に拒んでいても、債権の管理に支障が生じ財産の保護のために必要といえる場合には、本人同意が不要となる例外(法27条1項2号)に当たりうるとされています。
ここで注意したいのは、これは「個人情報保護法の観点で明示同意が要らない」という整理であって、3社間ファクタリングで売掛先へ債権譲渡を通知・承諾を得るか(民法467条の対抗要件の論点)とは別の話だという点です。ファクタリングには、売掛先に知らせず利用者とファクタリング会社の2者で完結する「2社間」と、売掛先へ通知して承諾を得る「3社間」があり、売掛先に取引を知られるかどうかはこの取引方式によって変わります。どちらの方式になるかを契約前に確認しましょう。
改正個人情報保護法の主な変更点
2022年4月全面施行(令和4年4月1日)の改正(令和2年改正)個人情報保護法の主な変更点を整理します(施行時期の詳細は個人情報保護委員会「令和2年改正個人情報保護法について」を参照)。
主な変更点
- 漏えい時の個人情報保護委員会への報告義務化
- 漏えい時の本人通知義務化
- 個人関連情報の第三者提供の制限
- 仮名加工情報の新設(匿名加工情報は平成27年改正で創設済みの別制度)
- 個人の権利強化(利用停止・消去請求)
- 越境移転(海外への移転)の制限強化
- 法令違反に対する罰則(法定刑)の引き上げ
漏えい時の報告義務
個人情報の漏えい・滅失・毀損が発生した場合、要件を満たすケースでは個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務化されました(法26条・個人情報保護法施行規則7条)。報告対象となるのは、次の4つの類型のいずれかに当たる場合です(報告義務の詳細は個人情報保護委員会(漏えい等の報告・本人への通知)を参照)。
- 要配慮個人情報が含まれる漏えい等
- 財産的被害が生じるおそれがある漏えい等
- 不正の目的による行為(不正アクセス等)による漏えい等
- 1,000人を超える本人に係る漏えい等
本人通知の義務化
漏えい等が発生し本人通知の要件に該当する場合、本人への通知が必要です。通知の方法・タイミングは事案により異なりますが、本人が自身の情報の流出を知り、対策を講じられる機会を提供することが目的です。
罰則の引き上げ(課徴金制度ではない)
改正では、法令違反に対する罰則(法定刑)も引き上げられました。個人情報保護法には課徴金の制度はなく、引き上げられたのは罰則です。たとえば個人情報保護委員会の措置命令に違反した場合、法人には1億円以下の罰金が科されうる水準に強化されています。なお罰則の強化部分は2020年12月に先行して施行され、その他の改正内容が2022年4月に全面施行されました。
ファクタリング会社の情報管理体制
ファクタリング会社の情報管理体制を、利用者として確認したいポイントを整理します。
確認したい体制要素
| 体制要素 | 確認ポイント |
|---|---|
| プライバシーポリシー | 取扱目的・第三者提供・保管期間が明示されているか |
| セキュリティ対策 | SSL・暗号化・アクセス制限 |
| プライバシーマーク・ISMS | 第三者認証の取得状況 |
| 従業員教育 | 個人情報取扱の社内教育体制 |
| 漏えい時の対応体制 | 事故対応窓口・連絡先の明示 |
第三者提供の確認
ファクタリング会社が利用者の個人情報を第三者(売掛先・回収会社・グループ会社など)に提供する場面と、その同意取得の方法を確認することが大切です。プライバシーポリシーに明示されているか、契約書に同意条項があるかを契約前に確認してください。
漏えい時の対応
万が一漏えいが発生した場合の対応を整理します。
利用者として確認したい対応
- 漏えい発覚後の事業者からの本人通知
- 漏えいの内容・範囲の説明
- 事業者の対応措置(拡大防止・再発防止)
- 利用者として取るべき対策(パスワード変更等)の案内
- 問い合わせ窓口の設置
不審な勧誘・なりすましへの警戒
漏えいデータを悪用した不審な勧誘・なりすまし詐欺の事例が報告されています。ファクタリング会社からの連絡を装った詐欺、本人確認データを利用したなりすまし契約などへの警戒が必要です。利用したファクタリング会社の公式連絡先で連絡内容を確認することが基本対応です。
契約前に確認したい情報管理チェックリスト
個人情報保護の観点から、ファクタリング会社を選ぶ・契約する前に確認したいポイントをチェックリストにまとめました。見積や契約の場でそのまま使えます。
情報管理・第三者提供のチェックリスト
- プライバシーポリシーに取扱目的・保管期間が明示されているか
- 売掛先情報を含む第三者提供の範囲が契約書・規約に書かれているか
- プライバシーマーク・ISMSなどの第三者認証の取得状況
- SSL・暗号化・アクセス制限などのセキュリティ対策
- 漏えい時の連絡窓口・対応体制が明示されているか
- 事業者の所在地・法人登記など運営主体の透明性
違法業者の警戒
個人情報を悪用する悪質業者の事例があります。本人確認書類の写真を要求しながら個人情報保護体制が不透明な業者は警戒が必要です。詳細は違法業者の見分け方を参照してください。
関連する条件カテゴリ
- 標準的な手数料帯の会社一覧:継続取引向け
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よくある質問
ファクタリング会社が個人情報を第三者に提供することはありますか?
あります。3社間ファクタリングでは売掛先への譲渡通知で取引先情報が共有されるほか、回収会社・グループ会社への提供も契約条件次第で発生する場合があります。第三者提供の範囲はプライバシーポリシーと契約書で確認してください。
売掛先の情報をファクタリング会社に渡すのに、売掛先の同意は必要ですか?
個人情報保護委員会の質疑応答では、債権譲渡に付随して債務者などの個人データを譲受人(ファクタリング会社)へ提供する場合、本人(売掛先)の同意は事実上推定でき、個別の明示同意は不要と整理されています。ただし個別の可否は事案により変わるため、実際の同意取得や通知の運用は契約書・プライバシーポリシーで確認してください。
プライバシーマークやISMS認証を持っている会社のほうが安全ですか?
第三者認証は情報管理体制の評価指標の1つで、安全性の参考になります。一方、認証の有無だけで判断するのは限定的な情報のため、プライバシーポリシー・契約条件・実際の対応も総合的に確認することが大切です。
個人情報保護法に違反すると課徴金は科されますか?
個人情報保護法に課徴金の制度はありません。2020年(令和2年)の改正で引き上げられたのは罰則(法定刑)で、たとえば個人情報保護委員会の措置命令に違反した場合、法人には1億円以下の罰金が科されうる水準に強化されています。「課徴金が科される」と説明する情報は正確ではないため注意しましょう。
漏えい事故の事実はどう確認できますか?
過去に漏えい事故があった場合、個人情報保護委員会のホームページ・事業者の公式発表・ニュース報道などで確認できることがあります。一方、すべての事案が公表されるわけではないため、現時点の情報管理体制の確認のほうが現実的な対応です。
本人確認データはどのくらいの期間保管されますか?
保管期間は、そのファクタリング会社が営む業務や適用される法令によって異なります。貸金業の登録を併せ持つなど犯罪収益移転防止法上の本人確認記録の作成・保存義務の対象となる会社では、法令に沿って一定期間保存します。一方、債権の買取のみを行う会社では、この犯収法上の保管義務が当然に生じるとは限りません。いずれの場合も、実際の保管期間と廃棄方法は各社のプライバシーポリシーで確認できます。
個人情報の利用停止・消去はできますか?
個人情報保護法上、本人の請求による利用停止・消去の権利が強化されています。一方、他の法令でデータの保存義務が課されている期間中は、その法令上の義務が優先される場合があります。どの法令がどの期間適用されるかは会社によって異なるため、具体的な対応は事業者に直接お問い合わせください。
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まとめ
ファクタリングの情報管理は、本人確認データ・取引データ・経営情報に加え、売掛先の情報まで扱う点で、事業者に厳格な体制が求められる論点です。改正法では漏えい時の報告義務・本人通知義務・第三者提供の制限・本人の権利強化などが導入され、罰則(法定刑)も引き上げられました(課徴金の制度はありません)。利用者が売掛先情報を渡す行為は、債権譲渡に付随する個人データの提供として本人(売掛先)の同意が事実上推定されると整理されていますが、売掛先が個人事業主ならその本人情報が個人情報に当たる点は押さえておきたいところです。契約前には、プライバシーポリシー・第三者提供の範囲・セキュリティ対策・漏えい時の対応体制を確認しておくと安心です。情報の取扱に不安があるときや、漏えい・なりすまし被害が疑われるときは、個人情報保護委員会(公式サイトで相談ダイヤルを案内)や、局番なしの消費者ホットライン「188」(国民生活センター・お近くの消費生活センターにつながる)といった公的な窓口にも相談できます。最適な会社は資金繰りの状況・売掛先・金額によって変わるため、気になる点は各社の窓口で確認しましょう。条件で絞り込みたい方はオンライン完結の会社一覧もあわせて活用してください。