キャッシュフロー計算書とは?3つの区分の見方と間接法での作り方
キャッシュフロー計算書の意味と、営業・投資・財務の3つの区分のプラス・マイナスの読み方、決算書から間接法で作る手順を架空の会社の数字で整理。簡易キャッシュフローと債務償還年数で返済できる力を確かめる方法、資金繰り表との違い、お金が足りないときの手の打ち方と公的な相談先もまとめました。
「決算は黒字なのに、預金が思ったほど増えていない」「銀行の担当者にキャッシュフローを聞かれたが、うまく答えられなかった」。キャッシュフロー計算書は中小企業に作る義務がないため、名前は聞いても作ったことのない経営者も少なくない書類です。用語が難しく、自社の数字にどう当てはめればよいか迷うのも無理はありません。
当サイトは、ファクタリング会社を第三者の立場で比較し、融資を含めた資金の集め方を中立に整理しているメディアです。本記事ではキャッシュフロー計算書の意味と、営業・投資・財務の3つの区分の読み方、決算書から間接法で作る手順を、架空の会社の数字を使って順に整理します。
あわせて、決算書の2つの数字で借入を返す力を確かめる「簡易キャッシュフロー」と、お金が足りないとわかったときの手の打ち方まで確認できる構成です。
キャッシュフロー計算書とはお金の出入りを示す書類
キャッシュフロー計算書は、1年などの決まった期間に、会社のお金がどこから入りどこへ出ていったかを示す書類です。利益を示す損益計算書とは違い、実際に手元のお金がいくら増えたか減ったかを読み取れます。
利益ではなく現金と預金の増減を表す
決算書の中心になる3つの書類は、見せるものがそれぞれ別です。キャッシュフロー計算書だけが、期間中のお金の動きそのものを示します。
- 損益計算書:1年間でいくら利益が出たか
- 貸借対照表:決算日の時点で財産と借金がいくらあるか
- キャッシュフロー計算書:1年間でお金がいくら増えたか減ったか
ここでいう「お金」は、手元の現金と普通預金・当座預金に、預け入れてから満期までの期間が3か月以内の定期預金などを加えたものです。1年定期のように期間が3か月を超えるものは、満期が近くても含めません。キャッシュフロー計算書は、企業会計審議会の1998年の意見書で財務諸表の一つに位置づけられ、1999年4月以後に始まる事業年度から上場企業などの開示に加わりました。
中小企業に作成義務はないが作ると役立つ
作る義務があるのは、有価証券報告書を出す上場企業などです。会社法(第435条第2項)と会社計算規則(第59条第1項)で、作る計算書類は貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表の4つと決まっており、キャッシュフロー計算書は入っていません。
ただし、日本公認会計士協会や日本税理士会連合会、日本商工会議所などの4団体がまとめた中小企業の会計に関する指針は、経営の実態をつかみ、金融機関や取引先からの信頼を高めるために「作成することが望ましい」としています。義務ではないものの、決算書2期分と明細、借入の返済予定表などがあれば自社でも作れるので、銀行と話す前に一度作っておくと安心です。
黒字なのにお金が減る理由が見える
損益計算書は、お金が入る前でも売った時点で売上にし、お金を払う時期とは別に費用を計上します。利益とお金の増減がずれる主な理由は、次の5つです。
- 売掛金が増えた(売ったのにまだ入金されていない)
- 在庫が増えた(仕入れたお金が商品のまま眠っている)
- 買掛金が減った(仕入代金を前より早く払った)
- 借入金の元本を返した(返済は費用にならない)
- 設備を買った(支払いは一度でも費用は数年に分かれる)
J-Net21で中小企業診断士の田中正浩氏は、成長期の会社は売上の伸びにあわせて売掛金や在庫が膨らみ、黒字でも資金繰りが追いつかず倒産することがあると説明しています。東京商工リサーチが2026年3月に公表した調査では、2025年に倒産した負債1,000万円以上の企業のうち3期分の財務データがある794社で、直前の決算が最終赤字だったのは64.3%でした。裏を返せば、3社に1社ほどは最終赤字ではない状態で倒産したことになるでしょう。
3つの区分とプラス・マイナスの読み方
キャッシュフロー計算書は、お金の動きを営業・投資・財務の3つに分けて示します。マイナスがすべて悪いわけではなく、どの区分がプラスでどれがマイナスかの組み合わせで会社の状態を読みます。典型的な例は次のとおりです。
| 営業 | 投資 | 財務 | 典型的な状態の例 |
|---|---|---|---|
| + | - | - | 本業の稼ぎで設備投資と返済をまかなっている |
| + | - | + | 稼ぎに借入も加えて投資を広げている |
| + | + | - | 稼ぎと資産の売却で返済を進めている |
| + | + | + | 大きな投資の準備などでお金を集めている |
| - | - | + | 本業でお金が出ていく中、借入で投資している |
| - | + | + | 本業の不足を資産の売却と借入で補っている |
| - | + | - | 本業がマイナスの中、資産を売って返済している |
| - | - | - | 手元のお金を取り崩してすべてまかなっている |
この表は公的な説明をもとに当サイトが整理した目安です。1年分だけで決めつけず、数期分の推移と、利益とのずれの原因をあわせて確かめましょう。
営業キャッシュフローは本業で生んだお金
営業キャッシュフローは、商品やサービスを売り、仕入代金や給料、税金を払った結果、本業でお金がいくら増えたかを示す数字です。企業会計基準委員会の実務指針は、借入に頼らずに借入金の返済などに回せるお金を、本業でどれだけ得たかを示す主要な情報としています。
中小企業診断士の岡田弘氏は、マイナスなら本業に問題がある場合が考えられるという立場です。プラスでも利益に比べて大きく目減りしていれば、売掛金の回収の滞りや販売不振による在庫の増加などが考えられるとも説明しています。一時的なマイナスはありえますが、何年も続くなら原因を探りましょう。
投資キャッシュフローのマイナスは投資の表れ
投資キャッシュフローは、機械や建物などの設備、有価証券を買ったり売ったりしたお金の動きです。設備を買えばお金が出ていくので、事業を続けている会社では通常マイナスになります。
岡田氏は、投資によるマイナスが営業キャッシュフローのプラスの範囲内に収まっているかを、チェックポイントの一つに挙げています。事業を広げる時期は範囲を超えることもありますが、その投資で将来お金が増え、借入を返せる見込みがあるかを確かめておくことが大切です。逆にプラスの年は、資産の売却や貸したお金の回収、期間が3か月を超える定期預金の払い戻しなどでお金が戻った状態なので、中身を確かめましょう。
財務キャッシュフローのマイナスは返済が進んだ状態
財務キャッシュフローは、借入・返済・増資・配当といった、お金の調達と返済の動きです。新しく借りた額より、返した額と配当が多ければマイナスになります。つまりマイナスは、借入の返済が進んだ状態です。
岡田氏は、借入金の返済額は営業キャッシュフローのプラスの範囲内に収まっていることが望ましいとしています。反対に、営業キャッシュフローが弱いのに財務キャッシュフローのプラスが続いているなら、借入で本業の不足を埋めている可能性があります。本業がマイナスなのに返済だけが進んでいるなら、新たに借りられていないおそれもあるでしょう。次の章で作り方を確かめ、自社の数字で見てみましょう。
フリーキャッシュフローは営業と投資の合計
フリーキャッシュフローは、本業で生んだお金から投資に使ったお金を差し引いた残りです。J-Net21や日本銀行の資料では、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計としています。会計基準に決まった定義はなく、設備投資の分だけを引くなど、資料によって計算のしかたはまちまちです。
マイナスなら、足りない分を借入でまかなうか、手元のお金を取り崩すことになります。営業キャッシュフローがプラスで積極的に投資した結果のマイナスなのか、本業の稼ぎ不足によるマイナスなのかを、営業キャッシュフローの符号と数期の推移で見分けてください。
間接法でキャッシュフロー計算書を作る手順
中小企業が自社で作るなら、決算書の数字を組み替えて作れる「間接法」が向いています。損益計算書の税引前の利益から出発し、お金の動きとずれている項目を足したり引いたりして、営業・投資・財務の3つを計算する方法です。
用意するのは貸借対照表2期分と損益計算書
間接法は、前期末と当期末の貸借対照表を比べて、売掛金や在庫がいくら増えたか減ったかを計算に使います。そのため、次の書類を先にそろえておきましょう。
- 前期末と当期末の貸借対照表(2期分)
- 当期の損益計算書
- 減価償却費がわかる明細(販売費及び一般管理費の明細、製造原価報告書)
- 設備の購入・売却と借入・返済がわかる資料(固定資産台帳、借入金の返済予定表など)
決算書は税理士に任せていても、申告書の控えと一緒に受け取っていることが多いはずです。見当たらないときは、顧問の税理士に「2期分の決算書と明細一式」を頼むと早く集まります。
税引前利益に減価償却費と運転資金の増減を加減する
営業キャッシュフローは、税引前当期純利益に、お金が出ていない費用と運転資金の増減を足し引きして求めます。財務諸表等規則(第113条)の間接法も、この順番で表示する方法です。説明用の架空の会社(単位は万円)で計算してみます。この会社は特別な利益や損失がなく(経常利益も500)、法人税等は損益計算書の金額も実際の支払額も150とします。
| 項目 | 金額 | 意味 |
|---|---|---|
| 税引前当期純利益 | 500 | 損益計算書から写す |
| 減価償却費 | +300 | お金が出ていない費用を戻す |
| 売掛金の増加(1,000→1,600) | -600 | 売ったがまだ入金されていない |
| 在庫の増加(400→500) | -100 | 仕入れたお金が商品のまま |
| 買掛金の増加(600→650) | +50 | 支払いを待ってもらっている |
| 法人税等の支払額 | -150 | 実際に払った税金を引く |
| 営業キャッシュフロー | 0 | 黒字でも本業のお金は増えていない |
覚え方は、売掛金と在庫は増えたら引き、買掛金は増えたら足す、です。この会社は500の黒字なのに、売掛金が600増えたため、営業キャッシュフローは0でした。
投資と財務を足して現預金の増減と照合する
次に、投資と財務を集計します。例の会社は設備を400で買ったので投資キャッシュフローは-400です。新たに300を借りて元本を200返したので、財務キャッシュフローは+100になります。
3つを足すと0-400+100で-300です。貸借対照表の現金と預金が期首800、期末500で、ちょうど300減っていれば計算は合っています。預け入れ期間が3か月を超える定期預金があれば、その分を除いて比べてください。合わないときは、固定資産の売却益を戻し忘れていないか、設備代の未払いがないかなどを確かめましょう。支払利息は営業に入れる方法と財務に入れる方法があるので、どちらかに決めて毎年そろえましょう。
直接法は入金と支払いを総額で積み上げる
もう一つの作り方が直接法で、売上の入金、仕入の支払い、給料の支払いといった取引ごとのお金の動きを、総額で積み上げます。企業会計審議会の意見書は、入金と支払いの総額が見える点を直接法の長所とする一方、取引ごとのデータをそろえる手間がかかると説明しています。
どちらで作っても営業キャッシュフローの合計は同じです。J-Net21も間接法を使うケースが多いようだと紹介しています。毎月の資金繰り表をつけている会社なら、その実績を1年分まとめると直接法に近い形になるでしょう。
簡易キャッシュフローで返済できる力を確かめる
キャッシュフロー計算書を作らなくても、決算書の2つの数字を足せば、借入を返す力の目安がわかります。それが簡易キャッシュフローです。借入の残高と比べれば、返し終えるまでの年数の目安もつかめます。
簡易キャッシュフローは税引後利益と減価償却費の合計
簡易キャッシュフローの計算式は、税引後当期純利益+減価償却費です。減価償却費はお金が出ていかない費用なので、利益に足し戻した分が、借入の返済に回せるお金の目安になります。J-Net21も、計画書の返済可能額をこの式で示しています。ただし、どの利益を使うかは資料によって異なり、主な式は次の4つです。
| 主な資料 | 計算式 |
|---|---|
| J-Net21(返済可能額) | 税引後利益+減価償却費 |
| 日本政策金融公庫(簡便な計算) | 経常利益+減価償却費 |
| 日本政策金融公庫(厳密な計算) | 経常利益+減価償却費-税金の支払額 |
| 中小企業庁「経営行動計画書」の記載例 | 営業利益+減価償却費 |
先ほどの会社なら、税引後利益350に減価償却費300を足して650です。年間の元本返済200は計算上まかなえますが、売掛金と在庫の増加を反映した営業キャッシュフローは0でした。簡易キャッシュフローは売掛金や在庫の増減を見ないため、売上が伸びている時期ほど甘く出る点に注意してください。
減価償却費は販管費の明細などに載っている
減価償却費は、損益計算書の「販売費及び一般管理費」に含まれています。本体に1行でまとめて書かれているときは、決算書に付いている明細(内訳)を見ると載っていることが多いです。探す場所は、会社の形によって次のとおりです。
- 会社:販売費及び一般管理費の明細
- 製造業の会社:製造原価報告書(工場の機械などの分)
- 会社の申告書:法人税申告書の別表十六
- 青色申告の個人事業主:青色申告決算書(一般用)3ページの「減価償却費の計算」
- 白色申告の個人事業主:収支内訳書(一般用)2ページの「減価償却費の計算」
製造業では、販管費の分と製造原価の分の両方を足します。日本政策金融公庫の手引も、製造原価報告書の減価償却費を転記し、営業経費の分と合計するよう案内しています。片方だけでは、返す力が実際より少なく出るので注意が必要です。
債務償還年数で借入を返せる年数の目安をつかむ
債務償還年数は、借入金の残高を簡易キャッシュフローで割った数字で、今の稼ぎが続けば何年で借入を返せるかの目安です。例の会社は借入残高3,000を650で割って、約4.6年になります。公庫の手引は「経常利益+減価償却費」で割る方法を示しており、この式なら3,000÷800で3.75年です。割られる数も、借入金だけにするか、手形割引や社債を含めるか、現預金を引くかで資料によって違います。
よく聞くのが「10年以内が目安」という話です。公的な資料では、公庫の手引が経営改善計画を終える時点の目標として「10~15年程度」を挙げ、中小企業の事業再生等に関するガイドラインが、計画の最終年度に有利子負債(借入金など)をキャッシュフローの「概ね10倍以下」にする内容を求めています。どちらも計画の目標で、融資の一律の合格ラインではありません。同じ式で数期分を並べ、年数が縮んでいるかを見ましょう。
資金繰り表との違いとお金が足りないときの対処
キャッシュフロー計算書は過去1年の振り返りで、これから先のお金の不足を知るには資金繰り表が必要です。振り返りで見つかった原因に手を打ち、先に足りなくなる時期がわかったら、融資や売掛金の早期回収で手当てするのが順番です。
過去を振り返る計算書と先を読む資金繰り表
J-Net21は、キャッシュフロー計算書は過去のお金の流れをまとめたもの、資金繰り表はお金が足りなくなるのを防ぐために将来の流れをつかむものと説明しています。進め方として挙げているのは、月ごとの試算表と通帳から過去の資金繰り表を作り、それをもとに3~6か月先を見通す表を作る方法です。
中小企業白書2021年版には、6か月先までの資金繰りの予測を金融機関に伝え、申し込んだ金額どおりの融資を受けられた事例も載っています。日本政策金融公庫の書式を使った作り方は、資金繰りの基本を解説した記事を参考にしてください。
営業キャッシュフローが弱いなら売掛金と在庫を見直す
営業キャッシュフローが利益より大きく少ないなら、まず確かめたいのは売掛金と在庫の増え方です。J-Net21は、中小企業は営業キャッシュフローの改善に重点を置くのが有効とし、売掛金の早期回収、在庫の圧縮、使っていない資産の処分、仕入代金の支払期間を延ばすことなどを挙げています。資産を売ったお金は投資キャッシュフローに入りますが、手元のお金は増えます。ただし支払期間を延ばすには取引先との話し合いが前提です。製造などを中小企業に委託する取引や建設工事の下請などでは、法律で支払いの期限が決まっているため、延ばせる範囲は限られます。
中小企業診断士の大石幸紀氏は、利益が薄く入金までが長い取引先に、値上げや回収期間の短縮を頼むよう助言し、取引をやめれば資金繰りが楽になる可能性もあると指摘しています。入金と支払いの日数の見方を詳しく知りたいときは、運転資金サイクルの分析を読んでみてください。
足りないお金は融資や売掛金の早期回収で手当てする
資金繰り表で不足が見えたら、日数に余裕があるうちに金融機関や日本政策金融公庫に融資を相談しましょう。入金まで間に合わないときは、売掛金を期日前に現金にするファクタリングも選択肢の一つですが、本業の赤字が続いている場合の穴埋めには向きません。
金融庁はファクタリングの利用に関する注意喚起で、ファクタリングを装って高金利の貸付けを行うヤミ金融業者に注意するよう呼びかけています。高額な手数料を払うと、かえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険性があるとも指摘しています。
会計の実務指針では、ファクタリングの入金は原則として営業キャッシュフローの区分です。ただし入金を前倒ししただけで、手数料の分だけ利益は減るため、本業の稼ぐ力が上がったわけではありません。借入ではないため負債には計上されない一方、手数料は一般に売却損などとして損益計算書に載るので、銀行が決算書から利用に気づくこともあります。表示のしかたはキャッシュフロー計算書での表示区分、残り日数に応じた手の打ち方は資金繰りが厳しいときの対処法で確かめてください。
迷ったときは公的な窓口に無料で相談する
どこに相談すればよいか迷うときは、次の公的な窓口に無料で相談できます。0120以外の番号は通話料がかかるので注意しましょう。
- よろず支援拠点:経営や資金繰りの悩み全般(各都道府県)
- 商工会・商工会議所:地域の経営相談
- 日本政策金融公庫 事業資金相談ダイヤル:0120-154-505(平日9時〜17時)
- 金融サービス利用者相談室:0570-016811(平日10時〜17時)
- ヤミ金融や脅しの疑い:警察相談専用電話 #9110
まとめ
キャッシュフロー計算書は、1年間でお金がどこから入りどこへ出たかを、営業・投資・財務の3つに分けて示す書類です。中小企業に作る義務はありませんが、決算書2期分と明細などがあれば間接法で作れ、黒字なのにお金が減った理由が見えます。
まずは税引後利益と減価償却費を足した簡易キャッシュフローを出し、年間の返済額と比べてみましょう。先の不足に備えるなら資金繰り表を作り、足りない分の手当てはファクタリング会社の比較も含めて費用で比べてください。