免税事業者のファクタリング|登録しないと困るのか
免税事業者のままでもファクタリングは使えます。手数料は非課税なので、ファクタリング会社が登録事業者かどうかも関係ありません。影響が出るのは売掛先との関係で、2026年10月から控除割合が80%から70%に下がります。登録するかどうかの判断材料を国税庁の一次情報をもとに整理します。
「適格請求書発行事業者に登録していないと、ファクタリングは使えないのでは」と心配する声を聞きます。結論から言うと、免税事業者のままでもファクタリングは使えます。利用の条件に、登録の有無は入っていません。
影響が出るのは、自社と売掛先との関係です。売掛先が課税事業者の場合、自社が免税事業者のままだと、売掛先は仕入税額控除を一部しか受けられません。そして2026年10月1日から、その割合が80%から70%に下がります。この記事では、何が問題になり、登録するかどうかをどう判断するかを、国税庁の一次情報をもとに整理します。基礎は ファクタリングとは を参照してください。具体的な税務判断は税理士・所轄の税務署への相談を前提とした論点整理です。
ファクタリングの利用そのものに制限はない
まず、よくある3つの心配について答えます。
手数料の扱いは登録の有無で変わらない
ファクタリング会社が受け取る手数料(債権の額面と買取価額の差額)は、消費税の非課税取引です。根拠は消費税法別表第二第3号、施行令第10条第3項第8号、基本通達6-3-1(10)です。
非課税取引には適格請求書が交付されません。適格請求書の交付義務を定めた消費税法第57条の4第1項が、対象を「課税資産の譲渡等」に限っているためです。つまり、ファクタリング会社が登録事業者かどうかは、手数料の扱いに影響しません。免税事業者にとっても課税事業者にとっても同じです。
免税事業者は消費税の計算に関わらない
免税事業者は消費税の納税義務がないため、仕入税額控除の計算そのものがありません。ファクタリングの費用は、そのまま経費として処理します。課税・非課税の判定に神経を使う必要はありません。
審査で不利になるわけではない
ファクタリングの審査で見られるのは、売掛先の信用力、債権の内容、支払期日です。自社が免税事業者であること自体が審査の落選理由になるわけではありません。ただし、売掛先との取引条件が不安定になると、債権の評価に影響することはあります。
影響が出るのは売掛先との関係
本当の論点はここです。自社が発行する請求書が適格請求書でないため、売掛先が仕入税額控除を受けられません。
売掛先ごとの影響
| 売掛先 | 影響 |
|---|---|
| 一般の消費者 | 仕入税額控除と関係ないため影響なし |
| 免税事業者 | 相手も控除しないため影響なし |
| 簡易課税・2割特例の事業者 | みなし仕入率などで計算するため影響なし |
| 本則課税の事業者 | 控除できる額が減り、負担が増える |
つまり、取引の中心が一般消費者や小規模事業者なら、登録しなくても実害はほとんどありません。本則課税の法人が中心なら、影響を受けます。
経過措置の控除割合が2026年10月に下がる
インボイス発行事業者以外からの課税仕入れについては、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。令和8年度税制改正で適用期限が2年延長され、割合が段階的に下がる形に見直されました。
| 期間 | 売掛先が控除できる割合 |
|---|---|
| 2026年9月30日まで | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 適用なし |
改正前は2026年10月から50%に下がる予定だったため、改正前に書かれた解説とは数字が食い違います。あわせて、2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、同じ相手先からの課税仕入れの合計額(税込み)がその年または事業年度で1億円を超える場合、超えた部分には経過措置を使えなくなります(改正前は10億円)。出典は国税庁の 令和8年度税制改正特集 です。
取引条件の見直しを打診されたら
売掛先の負担が増えるため、価格の見直しを求められることがあります。ここで注意したいのは、一方的な条件の変更は下請法・独占禁止法の問題になりうることです。公正取引委員会と中小企業庁は、インボイス制度に関連した取引条件の見直しについて考え方を示しています。
話し合いになった場合は、「いくらの負担がどちらに生じるのか」を数字で確認してください。控除できない分がそのまま価格に反映される必要はありません。取引価格の交渉は、債権の金額に直結するため、ファクタリングで受け取れる金額にも影響します。
売掛先から連絡が来たときに確認すること
「インボイスの登録はされていますか」と聞かれたら、次の3点を確認してから答えてください。
| 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|
| 相手が本則課税かどうか | 簡易課税や2割特例なら、そもそも影響がない |
| 実際にいくら負担が増えるのか | 取引額のうち控除できない分だけが影響する。全額ではない |
| いつからの話か | 2026年10月1日以後に開始する課税期間から割合が変わる |
たとえば税込110万円の取引で、経過措置が70%のとき、売掛先が控除できない分は消費税10万円の30%にあたる3万円です。取引額の全部が負担になるわけではありません。数字を確認せずに値下げに応じると、必要以上に譲ることになります。
登録の判断を先送りにする場合
すぐに決められない場合も、次の準備はしておいてください。
- 売掛先ごとの取引額と、相手の課税方式を一覧にする。
- 本則課税の売掛先が売上に占める割合を出す。
- その割合が大きいなら、登録した場合の納税額を試算する。
この3つがあれば、売掛先から連絡が来たときにその場で判断できます。ファクタリングで資金を確保している場合は、取引条件が動くと買い取ってもらえる金額も変わるため、早めに把握しておくと安心です。
登録するかどうかの判断
判断材料
- 売掛先の構成:本則課税の事業者が中心なら登録の利点が大きい。
- 取引先からの要請:すでに求められているなら、断ると取引量に影響することがある。
- 事務の負担:消費税の申告が新たに発生する。
- 特例が使える期間:納税額を抑える制度に期限がある。
- 今後の売上見通し:課税売上高1,000万円を超えれば、いずれ課税事業者になる。
2割特例・3割特例が使える期間
免税事業者からインボイス発行事業者になった場合、納税額を売上にかかる消費税額の一定割合にできる特例があります。
| 特例 | 納税額 | 使える期間 |
|---|---|---|
| 2割特例 | 売上にかかる消費税額の2割 | 2023年10月1日から2026年9月30日までの日が属する課税期間 |
| 3割特例(令和8年度税制改正で新設) | 売上にかかる消費税額の3割 | 個人事業者の2027年分・2028年分の申告 |
個人事業者なら2割特例は2026年分の申告まで、その後は2027年分・2028年分に3割特例が使えます。3割特例は個人事業者だけが対象で、基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることなどの要件があります。法人の場合、2割特例は2026年9月30日を含む課税期間までで、3割特例の対象にはなりません(出典: 国税庁 2割特例 特設ページ)。
これらの特例を使っている課税期間は、適格請求書を保存していなくても特別控除額による控除が認められます。仕入れの請求書を集める負担はその分軽くなります。
登録するとどうなるか
| 項目 | 登録前(免税事業者) | 登録後 |
|---|---|---|
| 消費税の納税 | なし | あり(特例で軽減できる期間がある) |
| 申告の事務 | なし | 年1回の申告が必要 |
| 売掛先の控除 | 経過措置の割合まで | 全額 |
| 請求書 | 記載事項は自由 | 登録番号と税率ごとの金額が必要 |
登録の手続きは税務署への申請です。免税事業者からの登録には経過措置があるため、必要な書類と時期は所轄の税務署または国税庁のインボイス制度特設サイトで確認してください。
免税事業者のままファクタリングを使うときの実務
請求書に書くこと
適格請求書の記載事項を満たす必要はありませんが、ファクタリングの審査では請求書が債権の内容を示す書類になります。金額・支払期日・取引内容・自社と売掛先の名称がはっきり書かれていれば問題ありません。登録番号がないことを理由に買取を断られることは通常ありません。
手数料の記帳
消費税の計算がないため、税区分の判定は不要です。「売上債権売却損」などの科目で費用として計上します。会計ソフトを使っている場合も、免税事業者の設定であれば税区分は自動で処理されます。仕訳の型は ファクタリングの仕訳 にまとめています。
将来登録する可能性があるなら
課税事業者になったあとは、司法書士報酬や振込手数料といった課税の費用について、控除を受けるために適格請求書が必要になります。今のうちから、手数料と付帯費用が分かれた見積書をもらう習慣をつけておくと、切り替えのときに慌てません。
見積書の内訳は、税務処理だけでなく条件比較にも効きます。総額しか示さない会社は、実質的な負担がいくらなのかを他社と比べられません。免税事業者のうちから内訳を求めておけば、手数料の水準を見る目も養われます。
よくある質問
免税事業者でもファクタリングを利用できますか
利用できます。自社の課税区分は契約の条件ではありません。事業として発生した売掛金があれば対象になります。
ファクタリング会社が登録事業者かどうかを確認すべきですか
免税事業者にとっては確認の必要がありません。手数料は非課税で適格請求書の対象外であり、そもそも仕入税額控除の計算をしないためです。会社選びは、手数料の水準・入金までの日数・契約条件で比べてください。
売掛先から価格の引き下げを求められました
控除できない分の負担をどちらが持つかは交渉事項です。一方的な変更は下請法・独占禁止法の問題になりうるため、書面でのやり取りを残し、納得できない場合は公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に相談してください。
2割特例はいつまで使えますか
2023年10月1日から2026年9月30日までの日が属する課税期間です。個人事業者なら2026年分の申告まで使えます。その後、個人事業者は2027年分・2028年分に3割特例を使えます。
ファクタリングの申し込みで登録番号を聞かれました
登録していない旨を伝えれば問題ありません。手数料は非課税で、利用者の登録の有無は税務処理に影響しないためです。番号の確認は、書類の様式をそろえるために一律で聞いている場合がほとんどです。登録がないことだけを理由に買取を断られることは通常ありません。断られた場合は、その理由を確認したうえで他社にも見積もりを取ってください。
売掛先が簡易課税かどうかは、どう確認しますか
相手の課税方式は公表されていないため、取引の担当者に直接聞くことになります。「インボイスの登録がないと控除できない」と言われた場合、相手が簡易課税や2割特例を使っていれば、そもそも影響がありません。話し合いの前に確認する価値があります。
売上が1,000万円を超えたらどうなりますか
基準期間(個人事業者は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えると、課税事業者になります。事業の拡大が見込まれる場合は、登録の時期を早める判断もあります。
関連記事
まとめ
免税事業者のままでもファクタリングは使えます。手数料は非課税で、ファクタリング会社が登録事業者かどうかも関係ありません。利用そのものに制限はありません。
考えるべきなのは売掛先との関係です。売掛先が本則課税の事業者なら、自社が免税事業者のままだと控除できる額が減ります。2026年10月1日からは、その割合が80%から70%に下がります。取引条件の見直しを打診される可能性は高まります。
登録するかどうかは、売掛先の構成・事務の負担・特例が使える期間で判断してください。個人事業者なら2割特例が2026年分まで、そのあと3割特例が2028年分まで使えます。登録するかどうかに一律の正解はなく、売掛先の顔ぶれで答えが変わります。判断に迷う場合は税理士や所轄の税務署に相談してください。会社の条件を比べたい方は ファクタリング会社の比較ページ を活用してください。