民事再生・会社更生手続中のファクタリング利用の可否
民事再生・会社更生の手続中の企業がファクタリングを利用できるかどうか、否認権リスク、管財人・監督委員の関与を法的観点から整理します。
民事再生・会社更生の手続に入った企業、あるいは申立てを検討している企業にとって、新規の資金調達は法的制約が複雑に絡む領域です。手続中は裁判所・監督委員・管財人が関与し、財産処分行為は厳格な手続を経る必要があります。ファクタリングは「売掛債権の譲渡」という財産処分行為にあたるため、手続の段階によっては否認権のリスクや管財人・監督委員の同意要件を慎重に検討すべき対象です。当サイトはファクタリング約209社を第三者の立場で比較し、利用者401人への口コミ調査(2026年3月実施)を運営しています。本記事を読めば、正常時・申立て直前・手続中という段階ごとに、否認リスクと必要な同意がどう変わるかを条文にもとづいて中立的に判断できるようになります。法務判断が必要な局面では、弁護士・申立代理人への相談が欠かせません。基本的な仕組みはファクタリングとはを確認してください。
民事再生・会社更生の基本
2つの手続の違い
| 手続 | 根拠法 | 主な対象 | 運営主体 |
|---|---|---|---|
| 民事再生 | 民事再生法 | 中小企業・個人事業主中心 | 原則として再生債務者(DIP型) |
| 会社更生 | 会社更生法 | 株式会社(大規模事業者中心) | 管財人(経営権を剥奪) |
民事再生は経営陣が引き続き経営する「DIP型(債務者占有継続型)」が原則で、監督委員の監督下で再生計画を進めます。会社更生はより厳格で、管財人が経営権を引き継ぎ、株主権も制限されます。
手続開始決定後の制約
いずれの手続も、開始決定後は次のような制約がかかります。
- 主要な財産処分行為に裁判所・監督委員・管財人の許可が必要
- 債権者への弁済が原則禁止(再生計画・更生計画に従う)
- 新規借入・債務負担行為に裁判所等の許可が必要
- 否認権により、危機的状況下の不当な処分行為が遡及的に無効化されうる
手続中のファクタリング利用の法的論点
ファクタリングを検討できるかどうかは、いま会社がどの段階にあるかで大きく変わります。まず、段階ごとの否認リスクと必要な手続を俯瞰します。
| 手続段階 | 会社の状況 | 否認・無効化リスク | 実務上の要点 |
|---|---|---|---|
| 正常時(平時) | 支払不能・支払停止にない通常営業期 | 低い(原則として否認の対象外) | 通常取引として保護されやすい |
| 申立て直前期 | 支払不能・支払停止が生じた前後 | 高い | 詐害行為否認・偏頗行為否認の対象になりうる。着手前に申立代理人へ相談 |
| 手続中(開始決定後) | 再生・更生手続の進行中 | 手続に反する契約は無効化されうる | 監督委員・管財人の許可/同意が前提 |
否認権リスク
民事再生法127条以下、会社更生法86条以下は、再生債務者・更生会社が手続開始前や危機的な状況下で行った財産処分行為について、監督委員又は管財人が「否認権」を行使できると定めています(民事再生では、否認権限を有する監督委員又は管財人が行使します。民事再生法135条)。否認権が行使されると、ファクタリング契約が遡及的に効力を失い、譲渡した売掛債権が再生債務者財産・更生会社財産に戻る一方、利用者が受け取った買取代金(ファクタリング会社が債権を買い取る対価として利用者に支払った資金)の返還が問題になります。この場合、ファクタリング会社は支払済みの買取代金について返還請求権を持ちます。
現行法(2004年改正以降)の否認は、条文上おおむね次の類型に整理されています。かつて講学上「故意否認・危機否認・無償否認」と呼ばれた区分にほぼ対応しますが、現行の条文見出しは詐害行為否認・偏頗行為否認です。
| 否認の類型 | 根拠条文 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 詐害行為否認 | 民事再生法127条/会社更生法86条 | 債務者が債権者を害することを知ってした行為(受益者が善意だった場合は否認できません) |
| 偏頗行為否認 | 民事再生法127条の3/会社更生法86条の3 | 支払不能後などに、一部の債権者にだけ行う担保供与・弁済等 |
| 無償行為の否認 | 民事再生法127条3項 | 支払の停止等の後、又はその前6か月以内にした無償行為・これと同視すべき有償行為 |
ファクタリングは代金を受け取る有償の債権譲渡ですが、条件によっては詐害行為否認・偏頗行為否認の対象になりうる点に注意が必要です。とくに支払不能・支払停止が生じた前後の債権譲渡は対象になりやすく、手続申立て直前のファクタリング利用は否認リスクが高まります。また、買戻し義務(償還請求権。売掛先が支払わないときに利用者が売掛債権を買い戻す義務)を伴う契約は、経済的に貸付けに近い機能を持ちます。金融庁も、買戻条件付きなど経済的に貸付けと同様の機能を持つファクタリングは貸金業に該当するおそれがあると示しており、こうした契約は手続の中で否認や、通常の債権売買とは別異の取扱いの検討対象になりやすいと考えられます。なお、倒産手続によらない場合でも、民法424条の詐害行為取消権により、債権者を害することを知ってした行為が取り消されることがあります(受益者が善意であれば取消しはできません)。どの類型に当たるかの判断は法律専門家の領域のため、本記事では「否認の対象になりうる」という一般的な整理にとどめます。
管財人・監督委員の同意
会社更生手続中は管財人が経営権を持つため、新規のファクタリング契約は管財人の決定で進めます。民事再生(DIP型)でも、財産処分行為について監督委員の許可・同意が必要な場合があります。手続中に「経営陣が独断でファクタリング契約」を結ぶと、後で無効化されるリスクが高くなります。
将来債権の譲渡と将来発生する売掛金
将来発生する売掛金を包括的に譲渡する「将来債権譲渡担保」と類似の取引は、再生計画・更生計画に重大な影響を与えます。手続中の新規ファクタリング契約で将来債権を含む場合は、計画案との整合性を裁判所・管財人が慎重に判断します。
手続前段階のファクタリング利用の注意
支払停止・支払不能の直前期
民事再生・会社更生の申立てを検討している段階で、急いでファクタリングを使うのは否認リスクの観点から注意が必要です。支払不能・支払停止が生じた前後の債権譲渡は、詐害行為否認・偏頗行為否認の対象になりやすく、否認されれば利用者が受け取った買取代金の返還を求められる事態も起こりえます(債権は再生債務者財産に戻り、ファクタリング会社は支払済みの買取代金について返還請求権を持ちます)。「申立ての1〜2か月前だから問題ない」と自己判断せず、申立代理人に相談してください。
正常時は原則として否認の対象になりにくい
支払停止・支払不能の状況にない通常期間のファクタリングは、後に民事再生・会社更生を申立てたとしても、原則として否認の対象になりにくいといえます。正常時の通常取引として、ファクタリング会社・利用者双方の権利が保護されやすい構造です。
手続中のファクタリングが向く場面・向かない場面
向く場面(管財人・監督委員の同意があることが前提)
- 再生計画・更生計画の遂行に必要な短期運転資金確保
- 計画案に「ファクタリング活用」が織り込まれている
- 3社間ファクタリングで売掛先の承諾が得られる
向かない場面
- 手続申立て直前で、否認リスクが顕在化する局面
- 管財人・監督委員の同意が得られていない
- 再生計画・更生計画の財源を毀損する規模の利用
- 悪質業者が手続中の経営者を狙ったケース
手続中ファクタリング利用時の注意点
弁護士・申立代理人への相談
民事再生・会社更生手続中のファクタリングは、契約前に弁護士・申立代理人への相談が欠かせません。否認リスク・管財人や監督委員の同意・計画案との整合性は法務判断が必要な領域で、独断での契約は重大なリスクを伴います。相談の際は、次の点を確認しておくと判断がスムーズです。
- いまの段階でこの債権譲渡が否認の対象にならないか
- 監督委員・管財人の許可や同意が必要か、その取得方法
- 再生計画・更生計画の資金繰りと矛盾しないか
- DIPファイナンス等、より条件の良い代替手段がないか
悪質業者・違法業者への警戒
手続中の経営状態は資金繰りが厳しくなりやすく、悪質業者の標的になりやすい層です。「再生中でも審査に通る」と過度に訴求する業者や、即日高額融資をうたう業者、買戻し義務を伴う契約を求める業者には注意してください。買戻しなどによって経済的に貸付けと同様の機能を持つ取引について、金融庁はファクタリングの利用に関する注意喚起で「貸金業に該当するおそれがある(登録が必要)」と示しています。とくに給与を対象とする給与ファクタリングは、最高裁決定(令和5年2月20日)が貸金業法・出資法上の「貸付け」にあたると判断しました。判断に迷う契約は、締結の前に弁護士・申立代理人や公的窓口へ相談してください。詳しくは違法ファクタリング業者の見分け方を参照してください。
取引先への影響
3社間ファクタリングは売掛先からの承諾が必要なため、手続中の状況を取引先が知ることになります。再生計画・更生計画の通過には主要取引先の協力が不可欠なため、ファクタリング利用が取引継続に与える影響を慎重に判断する必要があります。
手続中の代替的な資金調達手段
裁判所・管財人の許可を経た新規資金
| 調達手段 | 性質 |
|---|---|
| DIPファイナンス | 手続中の経営継続に必要な新規融資。共益債権として優先弁済 |
| スポンサー支援 | 事業譲渡・株式取得を前提とした出資 |
| 再生支援機関 | 中小企業活性化協議会等を通じた支援 |
とくにDIPファイナンス(手続開始後の新規借入れ)は、共益債権として扱われます(民事再生法119条5号、会社更生法127条5号)。会社更生では、共益債権は更生計画によらず随時、更生債権等に先立って弁済されます(会社更生法132条)。手続中の資金調達として法律上優先的な位置づけがある点が、通常のファクタリングとの違いです。実際の利用には裁判所・管財人の許可が前提となります。
よくある質問
民事再生手続申立て前にファクタリングを使うのは問題ありますか
正常な事業期間中のファクタリングは原則として問題ありませんが、申立て直前の支払不能・支払停止の状況下では否認リスクが高くなります。申立てを検討している段階では、契約の前に申立代理人へ相談することが欠かせません。
会社更生手続中に管財人がファクタリングを決定できますか
会社更生手続では、管財人が経営権を持つため、新規のファクタリング契約は管財人が判断します。更生計画の遂行に必要であれば、裁判所の許可を得てファクタリングを活用するケースもありえます。一方、計画案の財源を毀損する規模の利用は原則として認められません。
過去にファクタリング利用していた取引が否認される可能性はありますか
正常時の通常取引であれば、後に民事再生・会社更生を申立てたとしても、過去のファクタリング契約が否認される可能性は限定的です。一方、支払停止・支払不能後の取引や、明らかに不当な条件のファクタリングは否認の対象になりえます。具体的判断は弁護士に相談してください。
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まとめ
民事再生・会社更生手続中のファクタリング利用は、否認権リスク・管財人/監督委員の同意要件・計画案との整合性といった法的論点が複雑に絡む領域です。独断での契約は重大なリスクを伴うため、まずは弁護士・申立代理人に相談し、DIPファイナンスやスポンサー支援など手続と整合する代替手段を優先して検討してください。DIPファイナンスは共益債権として優先弁済される位置づけがあり、手続中の資金調達として通常のファクタリングより有利になりやすい選択肢です。事業再生の進め方や資金繰りに迷うときは、中小企業活性化協議会などの公的な再生支援窓口に相談できます。契約内容や業者の適法性に不安がある場合は、国民生活センター(消費者ホットライン188)や金融庁の相談窓口も利用してください。なお、正常時の通常取引として手続外でファクタリングを比較検討する場合は、高手数料帯のファクタリング会社の一覧も参考にできますが、資金繰りが厳しい局面ほど手数料の総額と契約条件を慎重に確認することが大切です。