手形とは?約束手形の仕組みと種類、現金化の方法をわかりやすく
手形とは、決めた金額を期日に自分で払うと約束する(約束手形)か、ほかの人に払うよう頼む(為替手形)ことを書いた証券です。小切手・でんさいとの違い、種類と呼び名の整理、取引の流れと印紙税、取立・割引・裏書などの使い方、不渡りのリスクと紙の手形の終わり、相談先をまとめました。
「取引先から手形で払うと言われたけれど、いつ現金になるのだろう」。手形を受け取っても、約束手形や受取手形といった言葉の違いが分からず、不渡りや紙の手形の廃止で損をしないかと不安になるのも無理はありません。社内では聞きにくく、自分で調べて判断したいという方もいるでしょう。
当サイトは、ファクタリング会社を第三者の立場で比較し、融資を含めた資金の集め方を中立に整理しているメディアです。本記事では手形の意味と種類、取引の流れ、受け取った手形を現金にする4つの方法を、費用と不渡りのときの負担という物差しで整理します。
同じ流れで、不渡りのリスクと紙の手形の終わりに向けた備え、困ったときの相談先まで確認できる構成です。
手形とは期日に払う約束や支払いの依頼を書いた証券
手形とは、決めた金額を期日(満期)に自分で払うと約束する(約束手形)か、ほかの人に払うよう頼む(為替手形)ことを紙に書いた証券です。受け取った側は原則として期日まで現金にできず、紙の手形は2027年3月に銀行間での交換が終わるなど、使える場面が急速に減っています。
期日に払うと約束して渡す紙の証券
手形は、今は手元に現金がなくても、期日までにお金を用意できれば代金の支払いに使える証券です。全国銀行協会も、手形は支払うだけの現金が今はなくとも、期日までに資金調達できる場合に現金代わりに使えると説明しています。
手形は、銀行と当座勘定取引契約を結んで当座預金口座を開き、銀行から手形用紙を交付してもらって振り出すものでした。ただし今は、三菱UFJ銀行のように手形用紙の交付も振り出しも終えた銀行が多くなっています。払う側は支払いを先に延ばせる一方、受け取った側は基本的に支払期日まで現金にできません。この時間差が、受け取る側の資金繰りを苦しくする原因にもなってきました。
小切手や振込、でんさいとの違い
手形とよく比べられるのが、小切手・振込・電子記録債権(でんさい)です。いちばんの違いは、受け取ったお金がいつ現金になるかと、今後も使えるかどうかです。
| 比べる点 | 約束手形 | 小切手 | でんさい | 振込 |
|---|---|---|---|---|
| 現金になる時期 | 支払期日 | 銀行に持ち込んだとき | 支払期日に自動入金 | 指定した日 |
| 受け取る側の手間 | 銀行に取立を依頼 | 銀行に持ち込む | 取立は不要 | なし |
| 印紙税 | 10万円以上で必要 | 課税文書でない | かからない | なし |
| 今後の扱い | 交換が2027年3月で終了 | 交換が2027年3月で終了 | 引き続き使える | 引き続き使える |
小切手は小切手法で見せたときに払うもの(一覧払)と決まっており、国内では振出日から10日以内に銀行へ持ち込む必要があります。でんさいは全銀電子債権ネットワークが扱う電子記録債権で、手形と違って印紙税がかからず、分けて譲ることもできます。ただし、受け取る側も金融機関との利用契約が必要です。
書き方と効力は手形法で決まっている
手形の書き方と効力は、1932年に制定された手形法で細かく決まっています。約束手形には、約束手形であることを示す文字、一定の金額を払う約束、満期、支払地、受取人、振出日と振出地、振出人の署名を書く必要があります(75条)。
これらが欠けた紙は、原則として約束手形の効力がありません(76条)。ただし、満期の記載がなければ一覧払とみなすといった救済の規定もあり、金額などを後で書き足す前提の「白地手形」も法律上認められています。
銀行の扱いは厳しくなっています。2026年10月以降は、振出日が空欄の手形を受け付けないと案内する銀行もあるため、受け取ったら振出日・受取人・金額が書かれているかを確かめておきましょう。
手形の種類と呼び名の整理
手形法が定める手形の種類は、約束手形と為替手形の2つだけです。受取手形・支払手形は帳簿上の呼び名、商業手形や融通手形は使われ方による呼び名なので、「種類」と区別して覚えると全体像がつかみやすくなります。
| 区分 | 主な言葉 | 意味 |
|---|---|---|
| 法律上の種類 | 約束手形・為替手形 | 手形法が定める2種類 |
| 帳簿上の呼び名 | 受取手形・支払手形 | 受け取った手形の権利と払う義務 |
| 使われ方の呼び名 | 商業手形・融通手形・銀行手形 | 取引の中身や振り出した人による呼び分け |
| 支払期日の決め方 | 確定日払・一覧払など | 満期の定め方の4種類 |
法律上の種類は約束手形と為替手形の2つ
約束手形は、振り出した人が自分で受取人に払うと約束する手形で、登場するのは振出人と受取人の2者です。為替手形は、振り出した人が第三者である支払人に支払いを頼む手形で、振出人・支払人・受取人の3者が関わります。
為替手形の支払人は、手形に「引受」と書いて署名すると、満期に支払う義務を負います(手形法28条)。全国銀行協会は、為替手形は現在主に輸出業者が輸入業者から代金を取り立てるために使われていると説明しています。世界大百科事典も、国内の取引では約束手形・小切手・振込が圧倒的に多いとしています。
受取手形と支払手形は帳簿上の呼び名
受取手形と支払手形は、手形の種類ではなく、帳簿(勘定科目)で使う呼び名です。財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(財務諸表等規則)は、受取手形を通常の取引にもとづいて発生した手形債権、支払手形を通常の取引にもとづいて発生した手形債務と定めています。
手形を受け取ると、帳簿の上では売掛金が受取手形に置き換わります。このとき生まれる「手形債権」は、もとの売掛金とは別に、手形そのものにもとづいて支払いを求める権利です。手形を譲り受けた人には、もとの取引の事情を理由に支払いを拒めないのが特徴です(手形法17条。払う側を害すると知りながら手に入れた人を除く)。取立手形や割引手形といった状態の呼び名は、手形の取り立ての記事で紹介しています。
商業手形や銀行手形は使われ方の呼び名
商業手形は、実際の商品やサービスの取引の代金として振り出された手形のことで、ふだん受け取る手形の多くがこれにあたります。反対に、取引の裏付けがないまま相手に資金を得させるために振り出すのが融通手形で、振り出した側が重い責任を負うため注意が必要です。詳しくは融通手形の記事で説明しています。
銀行手形は法律上の言葉ではなく、辞典では銀行が振り出したり支払いを引き受けたりした手形などを指すとされます。送金手形は、送金のために銀行が振り出す為替手形を指す古い言葉で、今の企業間の取引ではほとんど使われません。
支払期日の決め方は一覧払など4種類
手形の支払期日(満期)の決め方は、手形法33条で4種類に限られ、それ以外の決め方や分割払いの手形は無効です。
- 確定日払: 「11月30日払」と日付を書く
- 日付後定期払: 振出日から何日後と決める
- 一覧払: 見せたときに払う
- 一覧後定期払: 見せてから一定期間後に払う
一覧払の手形は、原則として振出日から1年以内に支払いを求めて見せる必要があります(34条)。満期の記載がない約束手形は、一覧払とみなされます。
手形取引の流れと現金になるまでの期間
手形は、振出人が受取人に渡し、受取人が期日に銀行を通じて取り立てると、振出人の当座預金から引き落とされて決済されます。受け取ってから現金になるまで2か月を超える取引もまだ4割あり、振り出す側には印紙税の負担もあるのが特徴です。
振り出してから決済されるまでの流れ
約束手形の取引は、次の順番で進むのが基本です。
- 振出人が必要事項を書き、印紙を貼って受取人に渡す
- 受取人は期日まで保管するか、割引や裏書に使う
- 期日が近づいたら、取引銀行に取り立てを頼む
- 電子交換所を通じて、振出人の銀行に請求が届く
- 振出人の当座預金から引き落とされ、受取人に入金される
全国銀行協会によると、2022年11月4日から手形の交換は電子交換所で行われ、各地の手形交換所は廃止されました。振出人の当座預金の残高が足りなければ、その手形は不渡りになります。取り立ての頼み方や持ち込む時期は、手形の取り立ての記事にまとめています。
受け取ってから現金になるまで2か月を超えることも
手形で代金を受け取ると、現金になるまで2か月を超えて待つ場合があるのが実情です。中小企業庁の審議会資料は、支払日までの60日に手形サイト(手形を受け取ってから入金されるまでの期間)の120日を足し、現金を受け取るまで180日かかる例を示しています。
こうした長い支払いは、近年見直しが進んでいるところです。公正取引委員会は2024年11月から、当時の下請法のもとで、サイトが60日を超える手形や電子記録債権などで支払う親事業者を指導する方針をとりました。2026年1月施行の製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(中小受託取引適正化法、取適法)では、対象となる取引での手形払いそのものが禁止されています。建設工事の下請は取適法の対象外で、建設業法のルールが適用されます。
中小企業庁が2025年12月から2026年1月に行い、13,683社が答えた取引条件改善状況調査では、手形などで代金を受け取っている3,604社のうち、サイトが60日以内の割合は57%と、前年度から24ポイント上がりました。サイトの考え方は手形サイトの記事で詳しく説明しています。
振り出す側は手形金額に応じた印紙税がかかる
手形を振り出す側が負担するのが、手形金額に応じた印紙税です。国税庁の表では、10万円未満は非課税、10万円以上100万円以下は200円、100万円を超え200万円以下は400円で、金額が大きいほど段階的に上がります。
一覧払の手形などは、10万円以上なら金額にかかわらず一律200円です。金額を書かずに振り出した手形は非課税ですが、あとで金額を書き足した人が作成者とみなされ、印紙税を納めることになります。でんさいには印紙税がかからないため、切り替えれば振り出す側の負担も減らせます。
受け取った手形を現金や支払いに使う4つの方法
受け取った手形を現金にしたり支払いに使ったりする方法は、期日まで待って取り立てる、銀行で割り引く、裏書して支払いに回す、手形の買取をうたう業者を使う、の4つです。期日まで資金がもつなら、手数料だけで済む取り立てが最も安上がりです。
| 方法 | 入金の時期 | 費用 | 不渡りになったら |
|---|---|---|---|
| 期日に取り立てる | 期日のあと | 取立手数料 | 振出人などに請求する |
| 銀行の手形割引 | 審査のあと | 割引料と手数料 | 自社が買い戻す |
| 裏書で支払いに回す | 支払いに充てた時点 | かからない | 譲った先から請求される |
| 手形の買取業者 | 業者による | 業者による | 契約による |
期日まで待って取り立てるのが最も安い
期日まで資金に余裕があるなら、取引銀行に取り立てを頼み、期日に入金されるのを待つのが最も費用のかからない方法といえます。かかるのは銀行の取立手数料だけで、割引料のような利息は払わずに済みます。
ただし、銀行の取扱いは変わってきている点に注意が必要です。三菱UFJ銀行は2024年1月から、2027年4月以降を期日とする手形・小切手の取立受付を停止しています。期日が遠い手形を受け取ったら、取り立てられるかを早めに取引銀行へ確かめてください。
手形割引は不渡りなら買い戻す借入れに近い
手形割引は、期日前に手形を銀行に渡し、期日までの利息分(割引料)を差し引いた額を受け取る方法です。全国銀行協会は手形の割引を融資の一形態と説明しており、貸金業法2条1項も手形の割引を貸付けに含めています。
大切なのは、割り引いた手形が不渡りになると、自社が銀行から買い戻しを求められる点です。帳簿の上では手形を手放した処理をしますが、買い戻す責任は残ります。割り引けば不渡りの心配がなくなるわけではないと覚えておきましょう。でんさいも銀行で割り引くことができ、手形の割引と同じく審査があり、不渡りになれば買い戻す責任が残るのが一般的なので、扱いは銀行ごとに確かめてください。
裏書で支払いに回しても責任は残る
手形の裏に署名して仕入先などに渡す裏書は、自社の支払いに手形を使う方法で、割引料はかかりません。ただし手形法15条1項により、裏書した人は、特に断りを書かない限り、不渡りのときに代わりに払う責任(担保責任)を負います。
そのため、渡した手形が不渡りになると、受け取った相手から代わりに払うよう請求されます。2026年10月以降は紙の手形を受け取りたがらない会社も増えうるので、裏書で渡す前に相手の了解を取っておくと安心です。
手形の買取をうたう業者は登録を確かめる
手形を期日前に買い取ると広告する業者もありますが、手形の割引は貸金業法で貸付けに含まれるため、業として行うには貸金業の登録が必要です(3条・11条)。使う前に、金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで登録を確かめてください。
ファクタリングは、金融庁が売掛債権を期日前に手数料を取って買い取るサービスと説明するもので、手形になる前の売掛金や、手形以外の売掛金を早く現金にする方法として使われます。手形割引との違いは債権流動化の記事で、契約前の注意点は違法業者の見分け方で確認してください。
不渡りのリスクと紙の手形の終わり
手形には、振出人が期日に払えない「不渡り」のリスクがあります。さらに紙の手形は、多くの銀行で2026年9月末に振り出しが終わり、2027年3月末には銀行間の交換もなくなるため、でんさいや振込への切り替えが必要です。
不渡りを6か月に2回出すと取引停止になる
残高不足などの理由で、期日に支払われなかった手形を不渡りといいます。全国銀行協会によると、6か月間に2回以上の不渡りを出した振出人は銀行取引停止処分となり、その後2年間は当座勘定取引と貸出取引ができません。
ただしこの制度は、電子交換所の規則改正で2027年4月1日に削除されます。受け取った手形が不渡りになったら、振出人や裏書した人に支払いを求められ、通常より簡単な手続きの手形訴訟(民事訴訟法350条)も選べる手段の一つです。振出人への請求は満期から3年、裏書した人への請求は原則として満期から1年で時効になり、期日に銀行へ持ち込んでいないと裏書した人に請求できなくなる場合もあります。早めに弁護士へ相談しましょう。
2026年10月以降の手形は銀行で現金にしにくい
2026年10月1日以降に振り出された紙の手形は、受け取っても銀行で現金にできないおそれがあります。全国銀行協会によれば、期限を公表した金融機関の多くが2026年9月30日を最終振出期限とし、そうした銀行では10月1日以降に振り出された手形は原則として当座預金から支払えません。
一方で総務省は、交換の廃止は手形法や小切手法の廃止ではなく、実務上の取扱いだと通知しています。法律上ただちに無効になるわけではないものの、銀行で現金にする道は閉ざされつつあるのが現状です。三菱UFJ銀行は、こうした手形を取引停止の回数に数えない種類の不渡り(0号不渡)として返すと案内しています。最終振出期限は銀行ごとに違うため、10月以降の日付の手形を渡されそうなら、振込やでんさいに変えてもらうよう相談してください。
2027年3月で交換が終わりでんさいや振込へ
全国銀行協会は、電子交換所での手形・小切手の交換を2027年3月31日で廃止します。2027年4月1日から手形がまったく使えなくなるわけではないものの、銀行どうしの相対での決済になるため、扱いを変える金融機関が出る可能性があるとしています。
取適法では、2026年1月1日以後に発注した対象取引で手形払いが禁止され、でんさいやファクタリングによる支払いも、期日までに満額を現金にできないものは使えません。これは発注者が支払手段として押し付けるケースの規制であり、受注側が自らの資金調達手段として使うファクタリングとは別の話です。
切り替え先は、でんさいか振込が中心です。でんさいライトなら、インターネットバンキングの契約がなくても使え、初期契約料と月額基本手数料はかかりません。ただし1件ごとの手数料はかかり、取扱い金融機関への申込みと審査が必要で、払う側として使えるのは1件100万円までです。廃止までの日程は手形廃止はいつからの記事で詳しく紹介しています。
支払条件に困ったときの相談先
取引先から手形での支払いを求められたり、長いサイトを押し付けられたりしたときは、公的な窓口に相談できます。相談料はかかりませんが、0570で始まる番号は通話料が必要です。悩みに合わせて次の窓口を使い分けてください。
| 悩みの内容 | 相談先 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 取引先の支払条件や手形払い | 取引かけこみ寺 | 0120-418-618 |
| 取適法の違反が疑われる | 公正取引委員会の相談窓口 | 0120-060-110 |
| 建設工事の下請代金 | 国土交通省の駆け込みホットライン | 0570-018-240 |
| 手形の買取業者とのトラブル | 金融サービス利用者相談室 | 0570-016811 |
| 貸金業者の確認やトラブル | 日本貸金業協会 | 0570-051051 |
| 脅しや違法な取立て | 警察相談専用電話 | #9110 |
| 資金繰り全般 | よろず支援拠点 | 各都道府県の拠点 |
取引かけこみ寺は平日9時から17時(12時から13時を除く)、公正取引委員会の窓口と金融庁の金融サービス利用者相談室は平日10時から17時の受付です。建設工事は取適法ではなく建設業法の対象なので、国土交通省の駆け込みホットラインが窓口になり、受付は平日10時から12時と13時30分から17時となっています。
まとめ
手形は、期日に決めた金額を払う約束や支払いの依頼を書いた証券で、法律上の種類は約束手形と為替手形の2つです。受け取った手形は取り立て・割引・裏書で現金や支払いに使えますが、割引や裏書をしても不渡りになれば自社が責任を負います。
紙の手形は多くの銀行で2026年9月末に振り出しが終わり、2027年3月末には交換も廃止されます。手元の手形の期日と振出日を確かめ、でんさいや振込への切り替えを取引先と早めに相談してください。手形以外の売掛金を早く現金にしたいときは、ファクタリング会社の比較も参考になります。