手形廃止はいつから?手元の手形の扱いと入金方法の切り替え方
手形廃止は、2026年1月の取適法による手形払いの禁止と、2027年3月末の電子交換所での手形交換の終了が重なって進んでいます。法律上の手形は残るものの現金にしにくくなる理由、受け取る側・支払う側で変わること、手元の手形の扱いとでんさい・振込への切り替え方、手形割引に代わる資金化の方法をまとめました。
「手形廃止と言われても、手元の手形はいつまで現金にできるのか」。取引先の支払方法が変わると、いつ・いくら入金されるのかが読めなくなり、資金繰りへの不安が先に立つ方も少なくないはずです。でんさいの準備をどこから始めればよいのか、という迷いも重なります。
当サイトは、ファクタリング会社を第三者の立場で比較し、融資を含めた資金の集め方を中立に整理しているメディアです。本記事では手形廃止の日程と、受け取る側・支払う側それぞれで変わること、手元の手形と入金方法の切り替え方を順にまとめます。
同じ流れで、手形割引に代わる資金化の方法と、不当な支払条件を求められたときの相談先もわかります。
手形廃止はいつから進むのか
手形廃止は1本の法律で決まったものではなく、2024年11月の指導、2026年1月の取適法、2027年3月末の銀行での手形交換の終了、2027年4月の支払告示が段階的に重なる流れです。2026年10月の時点では、多くの金融機関で紙の手形を新しく振り出せる期限がすでに過ぎています。
2024年11月から手形サイト60日超が指導対象に
最初の大きな区切りは2024年11月1日です。公正取引委員会は、この日以降に下請代金の支払いでサイト(手形の期間)が60日を超える手形などを渡した親事業者を、当時の下請法の「割引困難な手形」にあたるおそれがあるとして指導する方針を示しました。
それまでの指導の目安は、繊維業で90日、その他の業種で120日でした。受け取ってから現金になるまでの期間を短くする流れは、この時点から本格的に始まっています。
2026年1月の取適法で手形払いを禁止
2026年1月1日には、下請法が改正されて中小受託取引適正化法(取適法)に変わりました。対象となる取引では、2026年1月以降の発注分について、代金を手形で支払うこと自体が禁止されています。
電子記録債権(でんさい)など手形以外の支払手段も、受け取りから60日以内の支払期日までに満額の現金にならないものは使えません。公正取引委員会と中小企業庁の取適法テキストは、振込手数料を受注側に負担させることも、合意の有無にかかわらず違反になると説明しています。
対象になるかどうかを決めるのは、発注側と受注側の資本金・従業員数と取引の内容です。受注側に個人事業主が含まれることは取適法テキストの対象表に書かれており、資本金と従業員数の基準は取適法のリーフレットで確かめられます。
2027年3月末に銀行での手形交換が終了
法律とは別に、銀行の側でも紙の手形を扱う仕組みがなくなる予定です。全国銀行協会は、電子交換所での手形・小切手の交換を2027年3月31日に廃止すると公表しています。
これに合わせて、多くの金融機関が2026年9月30日を手形・小切手の最終振出期限に設定しました。全銀協の最終振出期限の一覧を見ると、期限を示した金融機関の多くは9月30日ですが、農協(JA)や信用金庫、信用組合などには2026年10月以降の日付を設けたところもあります。
期限を設けた金融機関では、期限より後に振り出された手形・小切手は原則として当座預金から支払われません。取引先がどの銀行で手形を振り出しているかを確かめ、その銀行の期限を一覧で確認しておきましょう。一覧に載っていない金融機関もあるので、その場合は取引銀行に相談してください。
2027年4月の支払告示で製造委託も60日に
2027年4月1日には、独占禁止法にもとづく支払告示が施行されます。製造委託などの取引で、受け取りから60日を過ぎても代金を払わないことを禁じるもので、取適法と違って資本金や従業員数の条件はありません。
ただし、受注側の取引上の立場が発注側より劣っていない場合は対象外です。合理的な理由にもとづいて支払条件を合意している場合など、「正当な理由」があれば60日を超える支払いも認められます。
ここまでの流れを表にまとめました。
| 時期 | 変わったこと | 主な対象 |
|---|---|---|
| 2024年11月 | サイト60日超の手形を指導 | 当時の下請法の取引 |
| 2026年1月 | 手形払いを禁止 | 取適法の対象取引 |
| 2026年9月末 | 多くの銀行で最終振出期限 | 紙の手形・小切手 |
| 2027年3月末 | 電子交換所での交換を廃止 | 紙の手形・小切手 |
| 2027年4月 | 受け取りから60日以内の支払い | 取適法の対象外の製造委託など |
手形廃止でなくなるものと残るもの
手形廃止でなくなるのは、銀行の間で紙の手形を交換して現金にする仕組みです。手形のルールを定めた法律そのものは残るため、2027年4月以降に手形が一斉に無効になるわけではありません。
手形のルールを定めた法律はなくならない
手形法や小切手法が廃止されるわけではありません。総務省が2026年9月に自治体へ出した通知も、電子交換所での交換廃止は手形法・小切手法の廃止によるものではなく、電子交換所を通じた金融機関の間での資金化ができなくなる、実務上の取り扱いだと説明しています。
全国銀行協会も、2027年4月1日から手形・小切手が使えなくなるものではないと案内しています。ただし、これは「これまでどおり使える」という意味ではない点に注意してください。
銀行での交換と取立てができなくなる
2027年4月以降は、手形を現金にするには電子交換所を通さず、郵送などで銀行どうしが個別にやり取りする必要があります。全銀協は、その扱いを続けるかどうかは各金融機関の判断で変わる可能性があるとしています。
全銀協によると、多くの金融機関が手形帳の発行終了や、2027年4月以降を期日とする手形の取立受付の終了など、取り扱いを前倒しで縮小しました。期限より後に振り出された手形を受け取っても、現金にできない場合があると全銀協は注意を呼びかけています。
つまり法律の上では手形が残っても、受け取った手形を銀行で現金にする道は細くなっていきます。紙の手形は新しく受け取らず、ほかの方法に切り替えるのが現実的です。
小切手も同じく電子化に向かう
交換の廃止と最終振出期限は、約束手形だけでなく為替手形や小切手も対象です。中小企業庁と公正取引委員会の2026年9月の通知も、手形と小切手の利用廃止に向けた取り組みとして周知しています。
当座預金からお金を引き出すための小切手も、期限の対象にしている銀行があります。小切手で支払いや受け取りをしている場合は、振込やでんさいへの切り替えを取引銀行に相談してください。
受け取る側と支払う側で変わること
取適法の対象取引では、受け取る側は満額の現金が早く入るようになり、支払う側は代金を前倒しで用意する必要が出てきます。多くの中小企業は両方の立場を持っているため、入金と支払いの両方が早まる前提で資金繰りを見直しておくと安心です。
受け取る側は入金が早まるが割引の枠が減る
取適法の対象取引で受け取る側にとっての一番の変化は、手形の期日を待たずに、受け取りから60日以内に満額を受け取れるようになることです。2021年に中小企業庁の検討会がまとめた報告書は、約束手形は現金取引に比べて支払サイトが約2倍と長く、立場の弱い受注企業に資金繰りの負担を負わせやすいと指摘していました。
公正取引委員会が2026年6月に公表した取適法の運用状況には、金利の上昇で割引手数料が重くなっていた運送業の事業者が、60日以内に満額が入ることを歓迎する声も載っています。
その反面、紙の手形を受け取らなくなれば、銀行での手形割引を使う場面もなくなるはずです。割引を前提に資金繰りを組んでいた会社は、代わりの資金化の方法を用意しておく必要があります。
支払う側は支払資金を前倒しで用意する
取適法の対象取引では、支払う側は、手形なら期日まで手元に残せた資金を、受け取りから60日以内の支払期日までに満額で払う必要があります。期日までに満額の現金になるでんさいなどは使えますが、サイトの長い手形の代わりにはなりません。
2021年の検討会報告書も、振り出す側が手形をやめられない理由に資金繰りを挙げ、自社だけがサイトを短くするとしわ寄せが来るという声を紹介しています。
中小企業庁と公正取引委員会は2026年9月、金融機関に対して、サイトの短縮に取り組む事業者の資金繰りの相談に丁寧に応じるよう要請しました。支払いが前倒しになる分は、早めに取引銀行へ相談しておくのが現実的です。
受け取る側と支払う側の主な変化を表にまとめました。
| 項目 | 受け取る側 | 支払う側 |
|---|---|---|
| 現金が動く時期 | 早まる | 前倒しになる |
| 振込手数料 | 負担しない | 負担する |
| 紙の事務 | 取立て・保管が不要 | 手形帳・印紙が不要 |
| 資金繰りの課題 | 割引に代わる資金化 | 支払資金の手当て |
表は取適法の対象取引の場合で、対象外の取引の支払条件は取引先との話し合いしだいです。
建設工事の下請は建設業法のルール
建設工事の下請代金は取適法の対象外で、建設業法のルールが当てはまります。取適法テキストによると、その理由は、建設工事の下請負には建設業法に似た規定があり、受注側の保護が別に図られているためです。
建設業法は、元請負人が注文者から支払いを受けた日から1か月以内に、下請代金を払うよう定めています。元請が特定建設業者の場合は、下請からの引渡しの申出の日から50日以内という期限もあります。
国土交通省は、特定建設業者が資本金4,000万円未満の一般建設業者に払う代金について、2024年11月以降に交付する期間60日超の手形を「割引困難な手形」にあたるおそれがあるとして、指導の対象にしました。
一方で、銀行での手形交換の終了は業種を問いません。建設業でも、2027年3月末を過ぎると紙の手形を電子交換所で決済できなくなる点は同じです。
手元の手形と入金方法の切り替え方
手元に紙の手形があるなら、期日と支払銀行を確かめ、期日が2027年4月以降のものは早めに振出人と相談します。これからの入金は、でんさいか振込で受け取れるよう準備を進めておきましょう。
期日が交換終了後の手形は早めに相談する
期日が2027年4月以降の手形は、銀行で現金にできない可能性があるため、早めに振出人と支払方法を相談してください。全銀協の特設サイトも、多くの金融機関が取り扱いを前倒しで縮小しており、その例として2027年4月以降を期日とする手形の取立受付の終了を挙げています。
扱いは銀行ごとに異なるため、注意が必要です。たとえば七十七銀行は、自行が支払地の手形の取立てを、振出日が2026年9月30日以前で期日が2027年3月31日以前のものに限っています。振出日が書かれていない白地手形は、期限後に振り出したものと同じ扱いで、窓口では受け付けず不渡りになるとしています。
どれが現金にできるかは、手元の手形の期日・振出日・支払銀行を一覧にして、取引銀行に見せて確かめるのが近道です。条件に合わないものは、振込やでんさいでの支払いに変えてもらえないか、振出人に相談しましょう。
でんさいは受け取るだけでも申込みが必要
取引先がでんさいで払うと決めても、受け取る側が利用の申込みをしていなければ受け取れません。でんさいネットは、契約は利用する各金融機関で申し込むよう案内しています。
でんさいは、全銀電子債権ネットワークが扱う電子記録債権で、手形をデータに置きかえたような仕組みです。でんさいネットによると、期日には自動で口座に入金され、紛失や盗難の心配がなく、印紙税もかかりません。
でんさいネットの統計によると、利用者登録数は2026年8月時点で582,488社と、前年同月より約8%増えています。取引先から切り替えの連絡が来てから慌てないよう、先に取引銀行で手続きを確かめておきましょう。
振込に変わるときに確かめる支払条件
手形から振込に変わるときは、支払期日と振込手数料の負担を、発注書などの書面で確かめてください。取適法の対象取引なら、発注側には支払期日などの条件を明示する義務があり、受け取りから60日以内に満額を振り込む必要があります。
取適法の対象外の取引では、支払条件は取引先との話し合いで決めるのが基本です。中小企業庁と公正取引委員会は2026年9月、支払告示に向けて発注側と受注側で話し合い、支払期日を決め直すよう業界団体に求めました。この要請をきっかけに、条件の見直しを持ちかけることもできます。
支払期日を延ばすなど、受け取る側に不利な条件を一方的に求められたときは、一人で抱え込まずに公的な相談窓口を使えます。連絡先はこの記事の「よくある質問」の章にまとめました。
手形割引に代わる資金化の方法
手形割引の代わりになるのは、でんさいの割引と譲渡、売掛金を売るファクタリング、金融機関の融資の3つです。費用のかかり方と審査の仕組みがそれぞれ違うため、急ぐ度合いと取引先との関係で使い分けます。
でんさいの割引と譲渡
受け取ったでんさいは、期日前に金融機関で割り引いて現金にしたり、自社の支払いに充てるため取引先へ譲渡したりできます。必要な金額だけ分割して使えるのが、紙の手形との違いです。
でんさいの割引について、七十七銀行は商業手形の割引と同様の取引で、利用には銀行の審査があると説明しています。手形割引は貸金業法でお金の貸付けに含まれる取引で、割引料は期日までの日数に応じてかかります。
ただし取適法の対象取引では、期日が支払期日より後になるでんさいで払うことは原則として認められていません。割り引く必要のあるでんさいを受け取る機会は、少しずつ減っていくはずです。手数料や法律上の性質の違いはでんさいとファクタリングの違いで比べています。
売掛金を売るファクタリング
ファクタリングは、取引先への売掛金を期日前にファクタリング会社へ売って現金にする方法です。金融庁は法的には債権の売買契約だと説明しており、貸金業法では貸付けとして扱われる手形割引とは、仕組みが違います。
取適法でファクタリングが禁止されたと受け取られることがありますが、法律が問題にしているのは、発注側が代金の支払手段として使う一括決済方式です。これは発注者が支払手段として押し付けるケースの規制であり、受注側が自らの資金調達手段として使うファクタリングとは別の話です。
一方で金融庁は、高い手数料を払うとかえって資金繰りが悪化するおそれがあると注意を呼びかけています。受け取れる額が売掛金に比べて著しく少ない契約や、回収できなかったときに買い戻しや自己資金での支払いを求められる契約は、偽装ファクタリングの疑いがあります。契約の前に違法業者の見分け方も確かめておきましょう。
運転資金の融資と制度融資
入金と支払いの時期のずれを埋めるには、金融機関から運転資金を借りる方法もあります。審査と手続きに時間はかかるものの、費用は金利で決まり、売掛金を手放さずに済むのが利点です。
支払う側として手形をやめる会社向けには、公的な支援もあります。全国銀行協会の自主行動計画は、日本政策金融公庫の低利融資と、通常の枠とは別の信用保証の枠を挙げています。使うには条件があるため、日本政策金融公庫や信用保証協会、取引銀行に確かめてください。
どの方法が合うかは、必要な金額と時期しだいです。融資を含む5つの方法の日数と費用は、資金調達の方法の比較で整理しています。
手形廃止でよくある質問
手形廃止について、迷いやすい疑問をまとめました。
手元の手形はいつまで使えますか
法律の上では、2027年4月以降も手形が無効になるわけではありません。ただし電子交換所での交換は2027年3月31日で終わり、2027年4月以降が期日の手形は取立てを受け付けない金融機関もあります。期日が近いものから取引銀行に確かめ、難しければ振出人と支払方法を相談してください。
個人事業主の取引も対象ですか
取適法では、受注側に個人事業主も含まれます。発注側が資本金1,000万円を超える会社などで、製造委託などの対象取引に当たれば、手形での支払いは禁止です。銀行での手形交換の終了は、事業の規模に関係なくすべての事業者に関わります。
でんさいの利用に費用はかかりますか
手数料は窓口になる金融機関ごとに決まっています。2024年11月に始まったでんさいライトは、初期契約料と月額基本手数料が無料で、記録の種類ごとに1件120〜240円(税抜)の料金がかかる仕組みです。別に窓口の金融機関の手数料がかかる場合があり、割引できるかどうかも金融機関ごとに違います。
不当な支払条件はどこに相談できますか
支払条件の悩みを相談できる公的な窓口は、次の4つです。
| 窓口 | 相談できること | 電話 |
|---|---|---|
| 取引かけこみ寺 | 取引条件の悩み全般 | 0120-418-618 |
| 公正取引委員会 | 取適法の相談 | 0120-060-110 |
| 駆け込みホットライン | 建設業法違反の通報 | 0570-018-240 |
| 金融庁 金融サービス利用者相談室 | ファクタリングの不安 | 0570-016811 |
取引かけこみ寺は中小企業庁の委託事業で、相談員や弁護士に無料で相談できます。国土交通省の駆け込みホットラインはナビダイヤルのため、通話料は発信者の負担です。
まとめ
手形廃止の柱は、2026年1月の取適法による手形払いの禁止と、2027年3月末の銀行での手形交換の終了の2つです。法律の上で手形が無効になるわけではありませんが、受け取った手形を現金にする道は細くなります。
まずは手元の手形の期日と支払銀行を確かめ、取引先と振込やでんさいへの切り替えを話し合ってください。入金と支払いの時期が変わる分は資金繰り表で確かめ、足りない分の資金化は、手数料と審査の違いを比べてから選びましょう。